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「これがジャパンメイドのスニーカー」 ― PUMA JAPANのスニーカーマニアが語る、「RALPH SAMPSON」復刻モデルの魅力

Photography Keisuke Tanigawa
Text Shota Kato(OVER THE MOUNTAIN)
Edit Keisuke Tajiri(TOIL)

PUMAより、往年の名バスケットボールプレイヤーの名を冠した「RALPH SAMPSON」のABC-MART限定モデル「RALPH SAMPSON LO MIJ」がリリース。ビンテージマニアを中心に愛されるPUMAのヘリテージモデルについて、その魅力をスニーカーマニアとしても知られるPUMA JAPANの野崎兵輔さんが語った。

PUMAは僕の人生の転機に関わってきた

自他共に認めるスニーカーマニアの野崎兵輔さん。そのスニーカー愛は中学生時代に芽生え、高校生になると成熟されたものに。雑誌でデヴィッド・ボウイやポール・ウェラーなどのインタビューを読み、彼らの足元を飾るスニーカーを掘り下げていくにつれて、膨大な知識量が備わっていった。そんな野崎さんにとって、PUMAは人生の転機に関わってきたブランド。小学生のころにはじめて履いたスニーカーがPUMAの「SM RIDER」だった。

野崎さんが小学生のころ購入したSM RIDERはいまでも大切に保管している

「『FAST RIDER』というモデルが欲しかったけど、当時は西ドイツ生産で18,000円もしたので、親に買ってもらえませんでした。それでお手伝いをしたり、お年玉を貯めたりして買ったのが少し安価な台湾製のSM RIDERだったんです。ブルーのアッパーに黄色いラインが流れるカラーリングは海外ブランドならでは。その美しさに惹かれたんですね」。

中学校でバスケットボール部に入部すると、途中から自分が好きなバスケットボールシューズを履けるように。そこで選んだのがNBAプレイヤーのラルフ・サンプソンのシグネチャーモデル、「SAMPSON MAJESTY」だ。ラルフ・サンプソンの身長は220cm台。サンプソンは背が高いうえにスピードもあって、ディフェンスリバウンドをとっては自らボールを運んでダンクをぶちかます。そんな規格外の選手の足元を支えていたのがPUMAのシューズだった。

発売当時のSAMPSON MAJESTYには80年代のスニーカー特有のシルエットの美しさを感じる(野崎さん私物)

野崎さんがSAMPSON MAJESTYと出会うきっかけとなった、雑誌『月刊バスケットボール』

「ラルフ・サンプソンを知ったのは、『月刊バスケットボール』に掲載されていた広告がきっかけです。彼がプレーする姿に魅了されて、追いかけるようになりました。彼の背が高くてシャープなルックスと、シューズのシルエットがリンクして迷わず購入したんですね。当時のモデルは履き潰してしまったけど、社会人になってから古着屋でデッドストックを見つけることができたんです。二足あるうちのひとつは保管して、もう一足は履いています」。

偉大なNBAプレイヤーの足元を支えた歴史的シューズ

SAMPSON MAJESTYはラルフ・サンプソンの身長やスピードに対応すべく、1985年にPUMAが彼のためにゼロから開発したモデルだ。80年代当時、素材も十分にないなか、約2年の月日を費やして完成。試行錯誤の結果、クッション性に優れたショックウェッジを搭載するなど、秀逸な機能性のシューズに仕上がった。

SAMPSON MAJESTYの取扱説明書には当時最先端の情報が詰められている

「当時のバッシュのミッドソールは今のようなハイクッション素材ではなく、ラバー素材のカップソールが主流でした。中身はゴムが詰まっているわけではなく、格子状に切り込みが入って空洞化されているんです。着地時に格子状の壁が沈むことで、構造体が衝撃を吸収して反発性を生み出す。よく見ると、このカップソールは一直線ではなく部分的にえぐれていて。土踏まずのあたりからかかとに進むにしたがって出てくる厚みによって、スムーズな屈曲が生まれます。フットベッドも特徴のひとつです。着地時に足のスイートスポットで地面を感じられ、足とシューズがよりフィットする立体的な造りになっています。長身のサンプソンの足首をしっかりホールドできるように、パディングを厚めに設けているんです」。

シューズの機能は足を入れて動くことでその効果を実感できるものだが、デザインはひと目見ただけで印象が伝わってくる。SAMPSON MAJESTYはシャープなシルエットが特徴的だ。

「シルエットの美しさは80年代中期のシューズならでは。80年代後半には新しい素材やデザインの登場によって、ボリューム感のあるシューズが増えてきます。シャープなSAMPSON MAJESTYは今履いても様になるシューズですね」。

初の日本製による復刻は、アバンギャルドでオーセンティックな一足に

SAMPSON MAJESTYは2019年の復刻にあわせて、RALPH SAMPSONとリネームされた。今回、ABC-MART別注のRALPH SAMPSON LO MIJはローカットモデルとなる。アッパーにはPUMAのロゴとともにラルフ・サンプソンのオートグラフが添えられているが、野崎さんは「本当に特別なこと」だと強調する。

アッパーに刻まれたラルフ・サンプソンのオートグラフは完全な復刻モデルであることの証
RALPH SAMPSON LO MIJ/¥37,400

アウトソールのパターンは当時のSAMPSON MAJESTYを忠実に再現している

「SAMPSON MAJESTYは1998年のPUMA創業50周年のときに『MAJESTY DEMI』という名前で復刻しているんです。それからリバイバルしたモデルもありますが、完全な復刻ではなくて。というのも、サンプソンのオートグラフを入れずにオリジナルに近い雰囲気でつくっていたので。それが2019年の再契約によって、オリジナルと同じ形でのオーセンティックな復刻ができるようになったんです」。

RALPH SAMPSON LO MIJと同時に展開されるABC-MART限定モデル
RALPH SAMPSON LO/¥10,780

サイドパネルのフォームストリップを取り除いたRALPH SAMPSONのニューモデルは、ブラックとホワイトの2色展開
RALPH SAMPSON MC PRM/¥12,100

2019年の復刻モデルは海外生産だったが、RALPH SAMPSON LO MIJはラルフ・サンプソン関連モデルとしては初のメイド・イン・ジャパン。PUMAとしても日本製のスニーカーを発表するのは2年振りとなる。ジャパンメイド=高品質と評価されているが、野崎さんによると日本製のスニーカーの良さは、「レザーの質、足のフィッティング、シルエットの3点」に表れているという。

「競技用だったシューズに、ライフスタイルシューズとして最適なマテリアルを選びました。オリジナルのアッパーは北米産ステアレザーですが、今回はカウレザーに毛付きのレザーを取り入れています。ヒョウ柄とトラ柄とゼブラ柄の組み合わせはアヴァンギャルドな印象ですが、大胆にひとつのシューズに落とし込むと、まとまり感のある仕上がりになりました。ベースカラーの黒と白一色のソールに対して、アクセントとしてマッチしています」。

海外製のフィッティングは快適さを重視した造りだが、日本製は日本人の足型に合わせているだけでなく、高い吊り込み技術によって美しいシルエットに仕上がる。さらに、海外製は正面のアイレットが開き気味になる一方で、日本製は真っ直ぐに伸びている。よりシャープな印象をもたらし、履いたときに足に吸い付くようなフィット感も得られる。

3種類のファーとレザーの組み合わせは、大胆なデザインながらも上品さを醸し出す一足に

「RALPH SAMPSON LO MIJは履き口のライニングにもレザーを使っています。化学的な素材を使ったシューズは経年劣化して履けなくなってしまいますが、この靴に関しては天然素材を中心に構成しているため劣化しにくい。長く履いていくことで自分のクセがつくと、もっと魅力的になるはずですよ。革靴に近い愛し方をしていただくと、より自分にとっての一足に育つと感じています」。

プライスは決して安くはないものの、オリジナルモデルの意義や日本製による復刻などを踏まえると、それ以上の価値が込められた一足。この特別な限定モデルをきっかけに、ラルフ・サンプソンについて調べてみてほしい。その偉大な功績からも愛着が湧いてくるはずだ。

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