スケートボードと茶道。かたやアメリカで生まれたストリートカルチャーであり、かたやはるか昔の日本で生まれたお茶の世界は一見無関係に見えるけど、共通するのは「コミュニティの場」として機能していること。そんなコンセプトの下、茶道にまつわる道具を、自身もスケーターである陶芸家・横山玄太郎が創作していくプロジェクトを始動。茶道は堅苦しい? いやいや、スケートと同じで遊び心が大切です。

一枚の板から切り出された一つの茶杓

この意表を突く組み合わせは、千利休だって想像し得なかったに決まっている。しかも、まさか自分のデザインした茶杓がスケートボードの板でつくられるなんて。

スケートボード ミーツ 茶道。アメリカが生んだスケートボードと、安土桃山時代に花開いた日本の茶道。両者を繋いだアーティスト・横山玄太郎が、まずつくったのが茶杓だ。茶道において、抹茶を茶入れからすくう役割を持つ茶器の一つ。そのモチーフとして選んだのは、千利休が自害の直前に弟子に遺したと言われる茶杓の形である。なぜ茶杓か? 数ある茶器の中で、横山を導いたのは、アーティストらしい直感だった。

「ものとしての茶杓の美しさですよね。スケートボードの板が茶杓になったときに、美しいものになるだろうという、イメージとしての確信がありました」

素材となるスケートボードの板に、アウトラインを転写し、その線に沿ってカッターを引く。それに合わせて電動の糸ノコで削り、やすりを長い時間かけて整えていく。根気のいる、地味な作業で出来上がる茶杓は、独特なレイヤーが美しい。合板のスケートボードだからこそ描かれる文様だ。そして横山は、一枚のスケートボードから切り出すのは、茶杓一つと決めている。

「一刀入魂と言うんですかね? 一つひとつのものの価値というか、ボード一枚ごとにあるストーリーを届けてみたかったんです。例えば、今切り出した自前の板ですが、BUGOUTというステッカーが貼ってあって、これは大学時代の友だちが、高校時代に組んでいたバンドの名前です。あと、もう一枚のChaos Fishing Clubは地元でスケートしている仲間のブランド。板は、擦れ方も人によって違いますし、同じものが二つとない、その人だけのものになっていくんですよね。そこから何個も茶杓をつくってしまうのは、違うかなと」

今回作品に使用したのは左の板。もちろんこれも横山自身が実際に使用した板のうちの一枚

試作のために使った板の数々。切り出していくと、薄い板を組み合わせた合板のスケートボードならではの美しい文様が浮かび上がる

切り出した状態の茶杓。ここから丁寧に磨きをかけて作品を仕上げていく

自身も筋金入りのスケーターだからこそこだわる、独特の美学。30年近く付き合い続けてきた、スケートとの対話の中で磨かれてきたのだろう。

「スケートボードといえば、チックタックのトリックぐらいしか知らなかったんだけど、高校のときに友だちがオーリーやフリップを見せてくれて、かっこいいって。それからすぐ始めて、ずっと毎日何かしらスケートボードのことを考えています、今でもね」

VANS ANAHEIM QUILTED MIX/¥10,450
完成した作品と、和を連想させるキルティング素材をまとったVANSのシューズ。茶道にストリートがインストールされ、VANSに和の世界が宿った、まさに両者が融合した瞬間だ

二番煎じにはなりたくない

「茶の湯」にまつわるアーティストのアートプロデュースやマネジメント事業を展開する「無茶苦茶」に参画する横山。今回はスケートの板を素材にしたが、次はどんなスケートのエッセンスを取り入れるのだろうか。「誰かの二番煎じのようなものはつくりたくない。だってつまんないでしょう?(笑)」と語る横山だからこそ、一筋縄ではいかないどんな作品がメイクされるのか楽しみで仕方ない。それは、自分のスタイルやオリジナリティを競い合う、スケートボードの文化に長年どっぷりと浸かってきたスケーター兼アーティストの習性のようなものなのかもしれない。

Profile

横山 玄太郎(よこやま・げんたろう)

ポップで独創的な作品を生み出す現代陶芸家。門前仲町にアトリエを構え、銀座三越をはじめ国内外のギャラリーで作品を発表。森英恵や漫画『へうげもの』の企画展などに参加する。また、30年近く前に出会ったスケートボードに今でも魅せられている。

Instagram @gentceramics

記事内のアイテムをチェック
記事内のアイテムをチェック

Related Item 関連商品

Shoes × Culture

同じカテゴリー一覧を見る