1984年にデビューしたadidas Originals「FORUM」。1990年代のアメカジブームでも人気を博したadidas製バスケットボールシューズの代表格は、令和に入った2020年末と2021年2月の二度にわたって、オリジナルのファーストカラーをフィーチャーした「FORUM 84 HIGH/LOW」がリリースされ、即完売。時代を超えるその普遍的な魅力を見せつけると同時に、若い世代には新鮮さを感じさせる「古くて新しい」雰囲気にも注目が集まっている。

現在のストリートファッションシーンでは、1990 〜 2000年代へのオマージュがトレンドだ。その背景の一部には、当時、日本で流行した文化が現代の韓国でニュートロ文化(ニュー+レトロ)としてリバイバルし、それが再び日本の若い世代に逆輸入されているとも。「FORUM」がこのムーブメントの影響で話題を集めている訳ではないものの、時を同じくしてリバイバルした「同世代」のこの両者は、コーディネートに落とし込む上でも相性は抜群だ。

adidas Originals TEE BLACK 21SS-I/¥4,389

バスケットボールシューズのDNAを感じさせつつ、ストリートスタイルに大胆にアップデートされた現代版FORUM。クラシックな要素はそのままに、厚底のプラットフォームソールで新鮮さをプラスした、女性向けモデル。
adidas Originals FORUM BOLD/¥13,200

日本ルーツの逆輸入カルチャー「ニュートロ」

インパクトある看板のハングル文字、飛び交う韓国語、お店から溢れる爆音のK-POP――。新型コロナウイルスの影響によって世界中の国境が断絶されてしまった今でも、日本最大のコリアンタウン新大久保へ来ると、自分が今どこの国にいるのかわからなくなる。

駅を出て大通りから少し細い路地へ入り込むと、そこはもう完全に韓国の街並み。まるで梨泰院(イテウォン)や明洞(ミョンドン)と同じような空気がそこにはある。韓流の聖地とも呼ばれる「イケメン通り」には、たくさんの韓国料理屋、洋服屋、コスメショップが立ち並び、平日でも若い男女で賑わいを見せている。

この街には、地元のスーパー的存在でもある「韓国広場」や「レトロポチャ」という名前ながら最近できたばかりの居酒屋、新大久保UGOのようなダイバーシティーの最前線をいくアートスペースなど、多種多様な文化が共存している。そういえば、新大久保駅の真上には、コワーキングスペースなどが入る「Kimchi, Durian, Cardamom,,, (略称 K,D,C,,,)」という名のフードラボなんかもできるらしい。

ソフトなフレンチテリー素材が心地良いフーディーと、シルキー素材を使ったワイドレッグスタイルの7/8丈トラックパンツ。
adidas Originals Adicolor Classics Short Hoodie/¥7,990
adidas Originals 7/8 Track Pants/¥8,789

adidas Originals FORUM BOLD/¥13,200

街に目を向けてみると、行き交う人々だけじゃなく、カフェやギャラリーの店員も若く、ファッショナブルだ。そんななかで、ひとつ面白い現象がある。「ニュートロ」ブームである。ニュートロとは、つまり「ニュー+レトロ」。1980 〜 90年代の「レトロなトレンド」を、当時を知らない今の10 〜 20代が「真新しいもの」としてファッションに取り入れている流れのことだ。このニュートロというのが、実は少し前から韓国でブームとなり、どうやら日本に逆輸入されたものらしい。今では、新大久保に限らず、日本中でトレンドのひとつとなっている。

Instagramを見るとたしかにレトロなファッションに身を包んだ人々のポストがたくさん出てくる。ダボダボのジャージ、フレアパンツ、オーバーサイズのダウンジャケット、ケミカルな差し色。そんなちょっぴりダサいファッションの、しかし皆一様にかっこいい若者がたくさんいる。

SHIBUYA109には「SHIBUYA109 lab.」という、毎月数百人の若者から情報を収集してトレンドをリサーチするラボがあり、その所長を務める長田麻衣さん曰く、「ニュートロ」は一つのトレンドとしてすでに定着しているらしく、手作り感のあるビーズアクセサリーや1980年代っぽいレトロなファッションは根強い人気だという。

ファッションに限らず、1990年代の日本の音楽やファッションカルチャーをオマージュし続けるアーティストのNight Tempoや、ネオンカラーなどどこかユートピア感のあるレトロなイラストが有名なShin Moraeなど、韓国発のニュートロな作品も、今や日本でも大変な人気である。

韓国ブームとは一線を画すニュートロの「無国籍感」

日本における「韓国トレンド」というくくりで言えば、韓国コスメの人気ぶりにはじまり、2020年秋には渋谷の一等地に韓国発のセレクトショップALANDがついにオープンし、ほかにもSTYLENANDAやCHUUなどのブランドやショップの日本上陸、ADER ERRORのようなストリートブランドの流行など、ここ5年ほどでもさまざまなトピックがあった。

だけど、今回のニュートロブームはそれらとは少し違う毛色だと感じる。一言で言えば「無国籍感」。おそらく、1990年代に日本で流行っていたからとか、それが韓国発の新しいトレンドだとか、そんなことはもはや関係ない。ジャージセットアップやオーバーサイズのスウェット、デニムルックやミニスカなんかが、ただ新鮮でかっこいいのだ。もはやそこに世代も国境もない。

前述の長田さんによると「韓国カルチャーだと認識していても、韓国が異国だという感覚がない」。それはとても面白い感覚だと思う。というのも、こうした新しいカルチャーとの接点はSNS。国籍も年代も関係なく、惹かれたビジュアルの世界観をたどっていくから、無国籍感が強まるわけだ。

今回のメインビジュアルで着用しているadidas Originalsのバッシュ「FORUM」だって、まさに1990年代を彩ったアイコニックなファッションアイテムの一つだ。当時の定価は¥29,000と高価ながらも希少なフランス製モデルは神格化され、FORUMを履くことが若者のステイタスになった。それが今また、新しいトレンドとして受け入れられている。

伝統を感じさせるスリーストライプスを配した軽くて耐久性のあるトラックジャケット。BLACKPINKのLISAが着用したことでも知られる
adidas Originals R.Y.V. Track Jacket/¥12,100

サイドレッグのスナップボタンがスタイルの幅を広げてくれる、シンプルでクールなトラックパンツ
adidas Originals R.Y.V. Track Pants/¥10,989

文脈ではなく純粋にファッションを楽しむ、ニュートロが更新する希少性

1990年代の日本といえば、アメカジと古着の時代だった。人とは違うファッションを求め、アメリカやヨーロッパのビンテージアイテムに人々は憧れた。流行は20 〜 30年で一周するというが、30年を経て、モノがありふれる現代の作り出されたトレンドに辟易する人々が、再び現代の希少性を求めているだけなのかもしれない。

それは、解像度の高すぎる世界に疲れ、ビット数の少ない世界を求めているかのようでもある。人とは違うことをしたい、誰とも被りたくない。それは一方では多様性とも呼べるだろうし、単調な消費社会に対するカウンターとも呼べる。

でも、それらは意識して生まれたものでは決してない。1990年代のストリートカルチャーが根底にあろうと、それが一度韓国で流行って逆輸入されたものであろうと、そんなことはどうだっていい。そんな背景などおかまいなしに、純粋に当時のファッションを新しいものとして楽しむのだ。そんな国籍や時代をフラットに捉える感覚こそがニュートロの真骨頂なのである。

だから、こうしたトレンドに名前をつけて定義し考察すること自体どこかバカバカしくも思えてくる。ファッションなのだから、今着たいものをただ着る。部屋着のようなジャージのセットアップにバッシュを合わせて、ビビッドなバケットハットを被って出かけてみる。ファッションなんて、結局はそれでいいんじゃないだろうか。そして、それはとてもかっこいいことである。

撮影協力:韓国広場、レトロポチャ、ソウルレコード

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