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Shoes × Culture

“究極の9曲”プレイリストヒダカトオルがセレクトする「秋の夜長に、愛と希望のアンセムを」

Text & Selection Toru Hidaka(THE STARBEMS)
Illustration Yusuke Saito
Edit Hayato Narahara

仕事中や移動中、そしてプライベートタイム。ひとりの時間にはいつも音楽が寄り添っている。自分の生活を形成する、9曲にして究極のプレイリストとは!? 第3回に登場するのは、突き抜けたポップネスとパンクマインドで音楽シーンを活性化し続けるヒダカトオル。終わりの見えない長い夜、弱きものに寄り添うパンクスならではのメロウが溢れ出す?!

Scene.1
Stand Alone 〜 さりげなく孤独に寄り添う優しい旋律

コロナ禍におけるダメージは物理的な部分だけに及ばず、精神面にも相当な影響を及ぼしたことでしょう……。たくさんの犠牲者が出た上、SNSを中心に個々の認識・意見の相違から軋轢が発生してしまうことも珍しくなく、スマホやPCを開くことすら躊躇するほどダウナーになった人も決して少なくはないと思います。そんな不穏な日々を乗り切っているなかで、何気ないときにふと耳にして、心や気持ちをスッと軽くしてくれる曲があります。

音楽における癒しの効果はさまざまな検証が繰り返されてきましたが(α波とかね)、本当の孤独を埋める音楽って実のところ、アーティストがエゴイスティックなまでに、その人のプライベート、いわば「孤」を突き詰めて描いている楽曲のような気がします。歌詞を読んでもよくわからないかもしれない。けれど、旋律のなかに自分の「孤」がシンクロした瞬間、なぜかメチャクチャ共感/共振して、まるで自分のための音楽かのように魅入られてしまう。そんなアブストラクトな瞬間こそ実はPOPミュージックの醍醐味であり、時代を超えて語り継がれる名曲たる所以なのかもしれません。

Scene.2
Two of Us 〜 大切な人との時間を紡ぐ愛の旋律

中学生のときにPUNKの洗礼を受けた身としては、どんなに寂しくても安易なラブソングには共感できない体質(耳質?)になってしまったのですが(しんみりするよりスカッとする曲を聴く方がしっくりくるのです)、年齢を重ねたいまは、孤独や寂しさはもちろんだけれども、恋愛による喜びだって共有したくなる、伝えたくなる、という気持ちも理解していますし、それを音楽に投影するのも自然なことだなと思えるぐらいには大人になりました……。かつての恋人が好きだったアーティストにいつまでも想い入れを持ってしまう、といったことは、誰にでも起こり得ることですしね。

とはいえ、非常にパーソナルな体験であるはずの「ラブ」という概念を、共通体験として音楽で聴かせるのはやはり至難の技。これはラブソングなのか? ってぐらいギリギリな表現の方がかえってリアルに「ラブ」が剥き出しになる瞬間があったり、またその表現方法も、時代を経るごとに激情からどんどん平熱のクールさに移行していくのも興味深く……。とくにR&BやHIPHOPに顕著ですね(振り子の原理的にいつかまたEMOくなるのかもしれませんが)。そんなラブソングのメリハリも楽しめる3曲をチョイスしてみました。

Scene.3
For Everyone 〜 苦楽をともにしたみんなで歌うアンセミックな旋律

ようやく感染者数が減ってきたなと思ったら、気温が下がってまた感染者は増加傾向に、海外では再度のロックダウン……。令和2年のほとんどをCOVID-19に右往左往させられている昨今ですが、秋に入って文化・芸術活動がささやかに再開され始め、次代のアンセムを求める機運も徐々に高まってくることでしょう。

アンセムとは、社会的にも物理的にも精神的にも、弱い立場の人の視点に立っているかどうかが鍵となるような気がします。先がまったく読めないこれからの時代、個々人が置かれている環境の違いや多様性の尊重から、二極化や分散が目立ってくると思うので、前時代的なユナイト感よりも「個」や「孤」を強調したアンセムが増えるのでしょう。一見、矛盾しているような概念ですが、それぞれが自立し、それぞれの責任で言葉を紡ぐことこそ、より多くの共鳴を呼ぶ時代なのかもしれません。

ちなみに、Color Killerはアメリカの子どもたちによるPUNKバンド。未来を担う子どもたちが歌うThe Replacementsのアンセムは、このご時世にあってとても希望に満ち溢れたカバーです。

Profile

ヒダカトオル

1968年千葉県生まれ。BEAT CRUSADERSのフロントマンとして多くのロックファンの支持を集めるなか、2010年に散開。その後、MONOBRIGHTへの加入&2年間の活動や、ヒダカトオルとフェッドミュージックでのAORへのチャレンジなどを経て、2012年末には越川和磨(Gt./ex.毛皮のマリーズ)らとの新バンド・THE STARBEMSを結成。以降もバンド活動のほか、ネオアコ 〜 ベッドルームソウルのアプローチを見せるソロユニット・GALLOWや、木村カエラ、椎名林檎、いきものがかり、BiS(現BiSH)といったアーティストへの楽曲提供やプロデュース、映画「BECK」の音楽担当、Gotch主宰音楽賞「APPLE VINEGAR」選考員など、多岐にわたって精力的な活動を続けている。

Instagram @hidakatoru

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