仕事中や移動中、そしてプライベートタイム。ひとりの時間にはいつも音楽が寄り添っている。自分の生活を形成する、9曲にして究極のプレイリストとは!? 第5回に登場するのは、先鋭的な音響アプローチで30年以上にわたって日本の音楽シーンを牽引してきた異才、Corneliusこと小山田圭吾。塞ぎ込みがちな真冬の心身をちょうどよく“チューニング”してくれる、深遠なるサウンド・テクスチャーの世界とは……?!

Scene.1
整体 〜 身体にシンクロするAmbient

流れてくる音楽がなんか変に気になっちゃうときってないですか。妙にテンションが高かったりとか、ある種のムードを強要してきたりとか。整体を受けてるときなんか、そういう感じがほんとにつらい。“無”になりたい。身体をチューニングしてるわけだから、ノイズを入れずにフラットに持っていけるといいなと思うんですよね。

1曲目のブライアン・イーノの「1/1」は、『Music for Airports(空港のための音楽)』っていうアルバムに入ってる曲で、静かで不安がなくて、会話の邪魔にもならない。無駄に上げもせず下げもせず、ちょうどいい空間を延々とつくってくれる感じで、いろんなシチュエーションに合う。アロマ的な楽曲ですね。

いわゆるAmbientと呼ばれる音楽がしっくりしてきたのは、20代半ばくらいのころ。はじめはゆったりした音楽を聴く感じがよくわかんなかったんだけど、20代っていろいろ忙しいし、感覚的にはどこかそういう音楽を求めてたのかも。自分の作品でいうと、『FANTASMA』(1997年)くらいでハマって。『POINT』(2001年)のときはもうすごく聴いてました。

最近Ambientのなかでもおもしろいものがいろいろ再発掘されてて、2曲目のスザンヌ・チアーニも心地いい。ちょっとNew Ageっぽさもあったりして。3曲目は3人のミュージシャン(サックス奏者、シンガーソングライター、ギタリスト)のコラボプロジェクト。Ambientのムードを残しつつもさりげなく歌が入ってて、Popsとしても聴けるAmbientというか、今までにない感じ。最近のリリースなんだけど、すごく気に入っててよく聴いてます。それぞれのソロも好き。

Scene.2
日本 〜 再発見されるジャパニーズ・エキゾチカ

昼にぼーっと車を運転してるときに、こういうのが流れると平和な気持ちになっていいなーっていう3曲(笑)。運転しながらできることといえば音楽聴くくらいだし、何かしながらの方がフラットにちょうどよく聴こえたりするんです。制作中だと、自分が作った曲がどんな風に聴こえるかの確認も車でやりますね。しかも最近はSpotifyが結構いろいろ教えてくれて、自分用のプレイリストみたいのを自動で毎週つくってくれる。絶妙に僕が好きそうなのをAIが選んでくれて、聴いたことないのも結構あって。ほんとあれは何なんだろう、あまりに絶妙で……実は毎週楽しみにしていたり(笑)。

ここで選んだのは、日本的情緒を感じる3曲。いずれもJ-POPのような音楽とはかなり異なる内容の音楽ですね。自分が好きな日本らしさが表現されている感じ。とくに冥丁(めいてい)にはめちゃくちゃびっくりした。Ambientっぽくもあるけど、この発想……日本の昔のレコード、SP盤とかなのかな? 版権が切れたものをサンプリングしているんだろうか。アルバムもコンセプチュアルで、音楽としての完成度もすごくちゃんとしてるし、ほんとにびっくりしました。すごく聴いてる。

そして一見異色に見えるのが、ジョン・キャロル・カービー。旋律がちょっと和風だなと思って入れました。彼は元々セッションミュージシャンで、いろんな人とやっていてセンスが独特なんですね。Avalanchesが『Wildflower』のレコーディングでたまたまLAにいるときに、誘われてスタジオに行ったら彼もいて。同じ曲でセッションしたりしてたんだけど、プリペアド・ピアノみたいにピアノ弦に物を挟んで微妙にチューニング狂わせて弾いてたりとか、おもしろいプレイをする人。

ルックスも、ものすごいマレットヘアーで後ろ髪がながーくて、それで上はタンクトップだけ、みたいな感じで……なんだこの人はって印象が強く残ってたんだけど、後で調べてみたらソロがすごく良くてめちゃくちゃハマっちゃった。一番新しいアルバムではPopsっぽいこともやってて、教授(坂本龍一)っぽい感じもちょっとあったりとか。多分坂本さんのこと好きなんじゃないかと思う。リズムボックスとか入ってくると今度は細野さん(細野晴臣)ぽい感じもあったり。いろいろちょうどいい感じでオススメです。

Scene.3
宇宙 〜 月の裏側に広がるサウンドスケープ

環境とか景色は、かかる音楽によって全然違って見えてくることがありますよね。ここで選んでいるのは、日常からもっと広い視点に飛ばしてくれる音楽みたいな……宇宙空間に漂ってて、客観的に現代の景色を見てるような気分になれる3曲。日常的にガンガン聴くってわけでもないんだけど、たまにそういう状態があると見てる景色が変わってくることがあって。意外と実用的な聴き方もできる音楽というか。現実のムードから引き剥がしてくれるから、自分の感情や精神と向き合える。そういうことをするのはたまにくらいでいいと思うんだけど。

3曲ともAmbientのクラシックだし、全員巨匠ですね。Aphex Twinは好きなアルバムも多いんだけど、ビートがたくさん入ってるものより『Ambient Works』シリーズが特に好き。で、最後は細野さん。もちろん坂本教授や幸宏さん(高橋幸宏)もだけど、やっぱり僕らの世代はYMOのメンバーから相当大きな影響を受けてます。小学生くらいからYMOを知ってるし、今では一緒に音楽もやっているし、すごく大きな存在。お世話になってるのが不思議な感じですよ。

今回選んだ音楽は、いわば何もない空間だからこそ、自分の感情にあった何かを見出せたりもするタイプだと思っていて。例えば、すごい泣きのメロディに泣きのコードみたいなものがエモーショナルかっていうと、そういうのには結構冷めちゃったりするんですよね。こっちの感情がうごめいてるときは、音楽が過剰に演出する必要がない気がするというか。Ambientがしっくりくる瞬間て、無機質な感覚とか感情ってより実はもっとエモーショナルなときなんじゃないかな。まぁ本当に落ち込んだときは、音楽なんて聞かないと思うけど(笑)。

Profile

Cornelius(コーネリアス)

1969年東京都生まれの小山田圭吾によるソロユニット。’89年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビューし、バンド解散後’93年、Corneliusとして活動開始。現在まで6枚のオリジナルアルバムをリリース。GLASTONBURYをはじめとする世界各地の大型音楽フェスに数々出演。2008年には映像集「Sensurround + B-sides」がアメリカ「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネート。最新作は2017年リリース『Mellow Waves』。また、「METAFIVE」へのメンバー参加や、日本を代表するアニメシリーズ「攻殻機動隊」の音楽を担当するなど、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやREMIX、プロデュースなど幅広く活動中。

http://www.cornelius-sound.com/

Instagram @corneliusofficial

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