仕事中や移動中、そしてプライベートタイム。ひとりの時間にはいつも音楽が寄り添っている。自分の生活を形成する、9曲にして究極のプレイリストとは!? 第7回に登場するのは、女優や執筆業でもマルチに活躍するシンガーソングライターの柴田聡子。不意に訪れる特別な「瞬間と永遠」を歌う彼女を、ときにメランコリックに、ときにグルービーに彩る私生活プレイリスト!

Scene.1 いつまでもコーヒーを飲んでいたいとき、それはペギー・リーの歌を聴きたいとき。

机の前に座って、もしもやることがあっても、やるぞー、と心のエンジン吹かしながらも、いつまでもくすぶってコーヒーをすすっていたいときがあります。そういうとき、歌が聴きたくなる。とくにペギー・リーが聴きたい。彼女の歌を聴くと、ぽっと「永遠」という言葉が思い浮かぶ。この歌を聴いている時間が無限に感じる。そこで「いつまでもこのままコーヒー飲んでいたいなあ」という私の願いはしっかり叶ってしまいます。すると、じゃあやることでもやろうか、と取り掛かってみたりする。それで日々はいい感じになります。大人っていいよな、と思う瞬間のひとつが、願いが叶えばその続きを求め過ぎないで、しっかり醒め、次に進むところです。永遠が、どんどん短くなっていて、感じやすくなっていて、なんだか得したなあって思います。

Scene.2 いつまでも歩いていたいとき、それはJay-Zの声を聴きたいとき。

時間も体力も無限だったころは、3時間くらい歩いて川を見に行ったりしていた。もちろん帰りも歩きです。今は、帰りは電車乗っちゃったり、そもそも車使っちゃったり。いやですね。そうではあってもいまだに、このままずっと外にいたいな、家に帰るのはちょっとな、と思って近所をほっつき歩くことは多くあります。そういうときにはでっかい印象の音楽が聴きたくなる。そしてなぜかJay-Zの声が聴きたくなる。彼の発する「イエアー」とか「エイッ」とか「フォォー」といった合いの手は、己のすべてを賭けた野望にも、鏡の前で眉毛を抜くようなちまちました風景にも自然とよく似合う。懐が深い。野望と現実、どっちにも思いを馳せることのできる今の心のちょうどいいところに響いてくれてるなと感じます。ぶらぶらあてもなく歩くって、相当自由に考えを巡らせることができるし、簡単に手に入る奇跡の瞬間だなと最近よく思います。

Scene.3 いつまでも起きていたいとき、それはさみしい歌を聴きたいとき。

自分はずっと夜更かしです。早く寝ればいいのに、何となく起きていることがやめられない。そうはいっても歳は取るので、毎日はやらないにしても、週に1日くらいはそういう日があります。少なくなったなあ。大人にだけは望まないでもなっちゃいますね。さて、そういうときに好んでやるのが、さみしくもグッとくる歌を聴くことです。声がさみしい、歌詞がさみしい、メロディーがさみしい、単純に楽器構成がさみしい、などさまざまなさみしさ。なぜこんな感情を録音できるのだろうと、音楽や人間の不思議を思いながらぽろっと泣いたりします。今、悲しさ、さみしさは、なぜか英語の方がよく伝わってきます。ということで、自分は日本語で歌詞を書くのに、全部英語の歌になってしまいました。今の自分は、日本語詞のリアリティを深刻に探して息切れする傾向があるので、英語の遠さ、わからなさがちょうどいいのかもしれません。

Profile

柴田 聡子(しばた・さとこ)

1986年札幌市生まれ。恩師の助言により2010年より音楽活動を開始。最新作『がんばれ!メロディー』まで、5枚のオリジナルアルバムをリリースしている。また、2016年に上梓した初の詩集『さばーく』では現代詩の新人賞を受賞。雑誌『文學界』でコラムを連載しており、歌詞にとどまらない独特な言葉の力が注目を集めている。2017年にはNHKのドラマ『許さないという暴力について考えろ』に主人公の姉役として出演。2020年7月にリリースした4曲入りEP『スロー・イン』収録曲「どうして」のミュージックビデオは撮影・編集を含め完全にひとりでつくり上げるなど、その表現は形態を選ばない。2021年5月12日、『がんばれ!メロディー』アナログ盤を発売予定。

https://shibatasatoko.com/

Instagram @batayanworld

Related Story

同じシリーズ一覧を見る

Shoes × Culture

同じカテゴリー一覧を見る