



Shoes × Culture
“究極の9曲”プレイリスト
仕事中や移動中、そしてプライベートタイム。ひとりの時間にはいつも音楽が寄り添っている。自分の生活を形成する、9曲にして究極のプレイリストとは!? 第8回に登場するのは、独自のオルタナティブヒップホップを切り開くラッパー、環ROY。表現の本質をストイックに追求し、音楽の垣根を越えアートとも共鳴する彼のプレイリストに、HIPHOPの心・技・体を垣間見る……?!

家族と過ごすとき、音楽に迷う。自分はプレイボーイ・カーティの新作を再生して「What!」「uh!」「Fxck!」などと掛け声を真似したい。妻はキース・ジャレットやビル・エヴァンスのピアノを再生したい。子はパウ・パトロールのサントラをループしたい。
結果、そのどれでもないものを選ぶ。なるべくプレーンなもの、ミニマルなもの。映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のサントラは全編がアントニオ・サンチェスのドラムのみ。スティーブ・ライヒの『Drumming』も全編がパーカッションのみで作られている。生活音と融和する最小限の楽音。軽やかなリズムが空間を満たす。
聴いたことのない雰囲気を持つ音楽に出会うと嬉しい、いつも探している。聴いたことのない雰囲気を持つ音楽は新しい。でも、なにが新しいのだろう。メロディ、コード、リズム、ミキシング、ヴィジュアル、要素は複合的で言語化は難しい。といっても、すべてが真新しいわけでもない。過去に聴いたことがあるような、でも、なにかがズレていたり、欠けていたり、意外な要素が組み合わさっていたりする。
そうやってどこか歪でも成り立っている構造体に触れたとき、新しさを感じている。そして、それは音楽に限らない。触れたことのない雰囲気を持つ作品に出会うと嬉しい、だからいつも探している。
リビングや仕事場に比べ、イヤホンはもっとも私的な音響空間だ。単純にスピーカーとの距離が関係しているのだろうか。ともかく、スピーカーと自分の間になにもないイヤホンは、思い入れの強い楽曲の再生に向いている。と、思う。
洋邦問わずラップを聴くことが大好きだ。生まれも育ちも日本の自分には、とりわけ日本語が親しみやすい。ふと無性に聴きたくなって、ときどき、引っ張り出すように再生する。まるでよき相談相手のように傾聴する。何年も何年も、繰り返し聴いている。
1981年、宮城県生まれ。ラッパー/プロデューサー。これまでに6枚の音楽アルバムを発表、国内外のさまざまな音楽祭に出演。その他、パフォーマンスやインスタレーション、映画音楽などを制作。近年の作品に音楽アルバム『Anyways』(2020年)、パフォーマンス『ありか』パリ日本文化会館(20年)、絵本『ようようしょうてんがい』福音館書店(20年)、展示音楽『未来の地層』日本科学未来館(19年)などがある。MV「ことの次第」が第21回文化庁メディア芸術祭にて審査委員会推薦作品へ入選。
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