仕事中や移動中、そしてプライベートタイム。ひとりの時間にはいつも音楽が寄り添っている。自分の生活を形成する、9曲にして究極のプレイリストとは!? 第9回に登場するのは、青春恋愛群像映画の新時代を切り開く映画監督、今泉力哉。彼のまなざしがとらえる不器用でナイーブな若者たちのリアルと、それを見守る国産音楽の切実な響きがこのプレイリストに。寄る辺ないすべて悲しき人々の、歪でシャイな純情に突き刺さる……?!

Scene.1 ライブにもいけない日々に直に脳にぶちこみたい音

最近、なんとも仕事に力が入らない。何をやってもうまくいかない。きっと、ずっとマスクをしてたり、お酒を飲んでくだらない話をしたり、ライブで大きな音を聴いたり、そういうことができていないからだ。イヤホンでも部屋でも車でも。この3曲をぶっ続けで聴いたら一瞬だけいろんなことを忘れられる気がする。逆に頭ん中のモヤモヤを代弁してくれてる気もする。こんなことは言いたくないけど、政治とか、立場が弱い人への視点とか、いろんなことにムカついている。ときには積極的に頭ん中を真っ白にすることも必要だとは思う。でも決して諦めたくはないから、その都度、悩みながら、音楽を聴き、生きていく。

Scene.2 髪を切らなくちゃなんて考える

伸びたままの髪について、くるりからミッシェルにバトンタッチ。髪を切らなくちゃと考えたり、くしゃみを嚙み殺したり。そういう些細なことの積み重ねで人生も人間もできている。同じ時を生きてることについて考えているうちに<さよなら>に辿り着いてしまう人もいる。去年から今年にかけて、いらない<さよなら>や早すぎる<さよなら>が多すぎた。でも、うれしい<こんにちは>も確実にあった。いろいろ考えてごちゃごちゃしてきて思考の糸がこんがらがってしまったら、長谷川白紙の歌声ですべて溶かしてもらおう。白紙の「シー・チェンジ」か、ラッキーオールドサンの「ミッドナイト・バス」を聴いて、うまくいかない日々を洗ってもらうんだ。

Scene.3 男の子と女の子とその空間にある重力や下心について

さよならについて考えたりするのは、愛おしい時が永遠じゃないことを知っているから。長谷川白紙からbonobosへ。重力。男の子と女の子。考えなくていいことばかり考えてしまう。高校生のときに聴いていた英語の歌詞のブリグリで終える。この曲に内包されている苛立ちやままならなさ、淋しさは、リピート再生して発光体にもすんなりつながる。

40歳になった。でも結局ずっと男の子と女の子のことばかり考えている。こんな世界はつまらないという女の子に、こんな世界をなんとかしてほしい。その横に寝転がって「はやく起きて」とか言われたいし、「洗濯するからさっさと風呂入って」とか言われたいし、お笑いについて熱く語って「お笑いって語った瞬間につまらなくなるよね」とか呆れられたりしたい。いつまでも情けない男でいたいけど、彼女が本当に困ったときには一番頼りになる人でいたい。頼りにはならないかもしれないけど、彼女を笑顔にさせられる人でいたい。でも、知ってるんだ。永遠なんてないし、自分なんていなくても、世界がつまらないうちはずっとあの子は魅力的だってこと。だから余計に大切にしたいと思う。

Profile

今泉 力哉(いまいずみ・りきや)

1981年生まれ、福島県出身。2010年『たまの映画』で長編映画監督デビュー。その後、『サッドティー』(2014年)、『退屈な日々にさようならを』(2017年)、『愛がなんだ』(2019年)、『アイネクライネナハトムジーク』(2019年)、『his』(2020年)、『あの頃。』(2021年)などを次々に発表。また手がけた作品とともに、トリプルファイヤ―、マヒトゥ・ザ・ピーポー、カネコアヤノ、Homecomings、斉藤和義、sano ibuki、松浦亜弥、モーニング娘。、長谷川白紙など、その主題歌や劇伴として携わるアーティストのセレクトも話題に。全編下北沢で撮影した最新作『街の上で』が絶賛公開中。主題歌はラッキーオールドサン。

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