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Shoes × Detail

ストリートとアートの融合、NIKEの新作「AIR FORCE 1 LV8 ユーティリティ “SKETCH PACK”」

Photography Shota Ashino(UN)
Text Sosuke Misumi
Edit Hayato Narahara

NIKEの新作モデル「AIR FORCE 1 LV8 ユーティリティ “SKETCH PACK”」が、2020年4月にGRAND STAGE店舗とNIKE直営店で販売開始。言わずと知れた名作スニーカー・AIR FORCE 1の新モデルは、ストリートカルチャーだけでなくアートの文脈をも感じさせる一足に仕上がっている。

ストリート×アート。2つの世界のリンクを感じさせるニューシリーズ

日常から切り離された真っ白な空間 - いわゆる美術館の「ホワイトキューブ」を思わせる空間にならぶ3つの“作品”。白い台座の上にはグラフィティアーティストが愛用する「MTN 94」のスプレーペイント、コンセプチュアルな車輪のオブジェ、そしてNIKEの新作「AIR FORCE 1 LV8 ユーティリティ “SKETCH PACK”」。一見バラバラに見えるこれらは、ストリートのアイテムとして語られがちなスニーカーがアートの文脈と接続し、ひとつのアートピースとして価値付けられることを示唆しているといえる。

「SKETCH PACK」最大の特徴は、レザー素材のアッパーに施された手書き風のデザインだろう。スウッシュからリアやタンのブランドロゴまで、フリーハンドの走り書きのようなスキームが採用され、遊び心がふんだんに取り入れられている。このグラフィティのような手法からストリートのバックグランドを汲んでいるようにも見えるが、ここで目を向けたいのが過去に発売された2つのコレクションだ。本モデルの本質的なコンセプトを推し量る上で、まずはそれらを振り返ってみよう。

ヒール内側のミニスウッシュは、ペイントではなく刺繍がほどこされている

NIKEに息づく「アートへのまなざし」

ひとつ目のコレクションは、2019年7月に国内販売された「NIKE AIR MAX 1 Tinker Hatfield “Sketch to Shelf”」。NIKEの代名詞「AIR MAX」の生みの親、ティンカー・ハットフィールドのスケッチをそのままデザインに転用した一足だ。スニーカーの神様が書き記すスケッチ。それはすでにひとつのアートピースと言っていいくらい、息をのむほど洗練されている。

ティンカーがフィーチャーされたNetflixの番組『Abstract: The Art of Design』を観た人ならわかるかもしれないが、彼が一足のスニーカーを作るとき、そこには建築やアーバンカルチャー、歴史、工学、そしてスポーツのリアリティが緻密に、美しく組み込まれる。彼のスケッチがアーティスティックである理由はここにある。「SKETCH PACK」に施されたラフスケッチ風のデザインは、ティンカーに代表されるNIKEのクリエイティブマインドを反映したものだと言えるだろう。

GRAND STAGEのみの限定販売となったブルーカラーは、インナーソールの色も統一されている

もうひとつは、2017年7月に発表された「NIKECRAFT MARS YARD 2.0」。世界的なアーティスト、トム・サックスとNIKEがコラボレーションした一足だ。彼の芸術はふたつの特徴を持っている。まず、作品を無愛想な素材(ダンボールや金属板など)で作り、その接合部分や素材感、構造を隠さないこと。次に、NASAやエルメス、キティちゃんなど現代社会のアイコンをモチーフにしているということ。

AIR FORCE 1リリース元年である「1982」がさりげなくあしらわれている

もちろん「NIKECRAFT MARS YARD 2.0」にも、彼の芸術的エッセンスが生きている。まず、ほとんどの素材は自然なまま利用されていて、染料は一切使われていない。そしてNIKEという現代のスニーカーシーンにおけるアイコンとしてのバリューや技術、資本をアートに転用している。

5年にわたるトライ&エラーを経て、トムは自身のアートプロジェクトを完遂させ、NIKEは新しい価値を宿したプロダクトを世に送り出した。こうしたプロジェクトをNIKEがここ数年続けていることを踏まえれば、今回の「SKETCH PACK」にもやはりアートのバックグランドを読み込むことが自然に思えてくる。

カラーはブルー、ホワイト、ブラックの3色展開

「SKETCH PACK」は、単なるAIR FORCE 1のバリエーションとは言いがたい。NIKEが現在進行形で考えているシューズデザインのセオリー、アーティスティックなものづくりへの態度が「手書きのラフスケッチ」というかたちを借りて現れているのだろう。アートピースと言ってもいい、クリエイティブマインドが詰まった一足だ。

NIKE AIR FORCE 1 LV8 ユーティリティ “SKETCH PACK”/¥13,200

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