鮮やかなイエローとブルーのコントラストが映える美少女の絵。その前にはパステルカラーの“もくもく”に包まれたReebok「INSTAPUMP FURY」がある。インパクト大! 2人のアーティストによるポップなペインティング&スカルプチャーの化学反応は、気づけば壮大なストーリーへと発展して……?! シューズをテーマにオリジナル・アートワークを創作する企画「アート・オブ・シューズ」第11弾!

Reebok「INSTAPUMP FURY」を題材にコラボレーション・アートを制作したのは、ペインターの愛☆まどんな(以下、愛)と台湾出身のアーティスト、BIRDMAN/Chiling(以下、チーリン)。これまで展示やYouTubeなどメディアを問わずコラボしてきた2人が、今回はコミッションワークで共演。そんな2人の出会いから今までの活動について、そして今作のコンセプトを聞いてみた。

愛: チーリンとの出会いは5年くらい前だと思います。そのころ私はラフォーレ原宿でライブペインティングをしていたんですが、チーリンも同じころラフォーレで展示をしていたんです。「7月のひな祭り BY BIRDMAN」という展覧会で、紙粘土で作られた雛人形がたくさん並んでいました。私、チーリンのつくる“子どもみたいな顔”がすごく好きで(笑)。「こんなにピュアな制作をしてる人がいるんだ!」って感動しちゃって、そこでの“一目惚れ”以来ずっと彼女のファンなんです。

チーリンのイノセントなものづくりの姿勢に惹かれたという愛。そんな2人は2019年に原宿・BLOCK HOUSEで合同展を開催することになる。そこでの合作が今回のコラボアートのきっかけだという。

BLOCK HOUSE屋上に設置された茶室にて

チーリン: 合作といっても、開幕前の追い込みやバタバタで、綿密な打ち合わせとかはできなかったんですけどね(笑)。結局その合作は、設営当日に現場合わせすることになったんですが、それが思いがけずいい感じだったんです。だから2回目もきっとおもしろいものができるだろうなって。

愛: 今回もお互いの制作過程を見ずに、最初のプランだけを共有して各々制作を始めました。それで今日現場で初めて合わせたんですが、やっぱりいいですね。お互いの制作を見合うと遠慮してしまって、あまりいい作品にならないから。おもしろい化学変化を起こすために、あえて話し合わない。そうすると出来上がった作品がまた違ったものに見えてくるんです。

今回はモチーフがスニーカーということで、足に目がいく作品にしたいなと。チーリンが双子だということもあって、自然と今回のイメージが生まれてきた感じがします。この娘たちの足を一本につなげたのはとくに理由があるわけじゃなくて、最初のプランのときにもまだ決まってなかった。だから、チーリンが制作に使ったスニーカーが一足だけだったのを見て驚きました。こうして作品を並べてみると、私が描いた2人が、真ん中の足に履かせるスニーカーを探して歩いてるように見えますよね。

迷いない笑顔を浮かべる左の子に比べ、右の子の表情はやや不安気。性格の異なる双子たちは、チーリンの作品と相対して“主人公”になった

INSTAPUMP FURYから飛び出す“魔法の世界”

別々に制作された2つの作品が、奇しくもひとつのストーリーへとシンクロし始める。それでは、チーリンはどんなイメージで制作したのだろう。

チーリン: 靴を眺めながら“魔法のランプ”を連想しました。中から何か出てくるような。七色の煙とともに立ち昇っているのは、ステッキをもった妖精。INSTAPUMP FURYのサイドにある穴から溢れる雲海では、妖精がステッキで太陽や神様を生み出していってるイメージ。ファンタジーですね。造形に使った発泡ウレタンスプレーは、勢いよく飛び出してもくもくと立ち上がっていくので、煙や雲のようなイメージを具体化するのにちょうどよかったです。

片足を共有する双子、世界をつくる妖精、魔法の靴。コラボアートで生まれたのはなんと“神話”だった

エアを駆使したINSTAPUMP FURYから、発泡ウレタンの“煙”が立ち上がる。チャンバーのデザインとチーリンの造形はたしかにリンクするところがある。今回数あるシューズの中からINSTAPUMP FURYをチョイスしたのもチーリンだそう。何が決め手だったのだろうか。

チーリン: 以前「W<」デザイナーのウォルター・ヴァン・ベイレンドンクがINSTAPUMP FURYを履いているのをみて、無性に欲しくなったのを思い出したんです。彼は赤と黄色の通称“シトロン”を履いていて、そのビビッドなカラーリングがかっこよかったんですよね。

BIRDMANことチーリン。カラフルな色合いを好む彼女は、昔からよく黄色をまとっているそう

90年代・日本のハイテクスニーカーブームを牽引した一足でもあるINSTAPUMP FURYは、1994年にリリースされたReebokの代表作。アイスランドの歌姫、ビョークが雑誌『cut』の表紙で着用したことで人気に火がついた。以来、INSTAPUMP FURYは名だたるファッションブランドから別注を受けるだけでなく、ゴジラ・ドラえもん・ガンダム・エヴァンゲリオンといった日本のサブカルチャーとのコラボも多い。最大の特徴である「ザ・ポンプテクノロジー」によって、アッパーのボタン一つでフィッティングを調整することが可能。エアが充填されるチャンバーは、機能面のみならず個性的なデザインの核心にもなっている。

Reebok INSTAPUMP FURY OG/¥19,800

ブレない個性は「自分の恥ずかしいところ」にある

INSTAPUMP FURYが一目でそれとわかるデザインを持つように、愛の作品も一目で彼女のものだとわかる。トレードマークである美少女というモチーフは、彼女の作家活動の第一歩と深く関わっていた。

愛: 私は物心ついたときから絵が好きで、あまり外にも遊びに行かない内向的な子どもでした。小学生の卒業文集にはすでに絵描きになりたいと書いていましたが、本格的に志したのは中学生のとき、横浜トリエンナーレ2001で会田誠さんの作品を見てから。「いつか必ず会田さんに会いたい!」って思っていましたね。その後、会田さんが講師をしている美学校に進学しました。

初めて見た会田誠作品は『ジューサーミキサー』。しかし彼の影響で美少女を描き始めたのかといえばそうでもない。

愛: 少女の身体が美しいっていうのは、自分が少女のころから思っていたことです。それはもちろん人には言えなくて、こっそりと手帳に少女の裸を描きためていました。会田さんが描く美少女は大好きだったし、彼に私の嗜好の話もすればよかったんだろうけど、在学中はできなかったんです。合評には何の変哲もない動物の絵を出したりしてて、会田さんにも「どこにでもあるつまんない絵だね」って言われてました。

でも卒業間際に“秘密の手帳”を見せる機会がたまたまできたんです。そしたら会田さんが「なんでこれをもっと早く出さなかったんだ!」って。「自分が恥ずかしいと思っていることこそ、人前に出したほうがいい。人を楽しませる絵はそういう絵だよ。これは続けたほうがいい」と言われました。それから私は「美少女以外描かない」と決めて今に至っています。

愛☆まどんな。追い求めるものがずっと変わっていないところも、2人の共通項だ

チーリン: いわゆるエロに寄り過ぎず、でも健全なかわいさだけでもない、絶妙なさじ加減がいいですよね。あと、色彩がすごくきれい。やわらかいけどビビッドな色合いが、私の好みと合っててシンパシーを感じます。

自分の“好き”に正直な愛とチーリンの作品は、見る者に強いインパクトを与える。媚びたり、恥じたり、おもねったりしない。だからこそ作品に強度が備わる。彼女たちの作品は、一目で彼女たちのものだとわかるし、彼女たちにしかつくれない。ファッションブランドやミュージシャンとコラボしたときも、2人の持ち前の“調子”は変わらなかった。どんなコラボをしてもその存在感を失わないINSTAPUMP FURYのように、魅力とは、自分の“歪さ”を誇り肯定する強さから生まれる。

Profile

愛☆まどんな(あい・まどんな)

1984年、東京生まれ。嫌われない程度に愛されたい女流美術家。美少女はみずからの愛を代弁する究極のモチーフ。2007年より愛☆まどんなという名で秋葉原の路上を起点に、ライブペインティングの活動を開始する。絵画、立体、イラストレーションなど、その活動は多岐にわたり、作品の展示のみならずミュージシャンとのコラボレーションや、でんぱ組.incをはじめとするアイドルの衣装デザイン、また昨年には自身初の漫画『白亜』を出版するなど表現の幅を広げている。

https://aimadonna.com/

Instagram @aimadonna.jp


BIRDMAN(ばーどまん)

台湾出身のアーティスト。2015年から東京拠点に活動スタート。ファッションをモチーフにしたカラフルな作品が注目され、ラフォーレ原宿1Fの人気セレクトショップ「WALL 原宿」や美術館でイラスト展を度々開催。VERMEERIST BEAMSなどブランドのイベントDMなども手掛ける。イラストを多数UPしているインスタには、海外セレブから直接制作の発注が来ることも。愛☆まどんなとはコラボ展を開催するほか、でんぱ組.incの衣装やグッズデザインでもコラボしている。

Instagram @birdmanchiling

Gallery Information

BLOCK HOUSE

オフィス、カフェバー、そして2つのギャラリーからなる複合型スペース。2つのギャラリーでは展覧会やイベント、ファッションの展示会からライブパフォーマンスまで幅広いイベントを開催。

東京都渋谷区円山町11-7

TEL: 03-6455-2056

開館時間: 展示によって異なる

休館日: 展示によって異なる

http://www.blockhouse.jp/

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