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Shoes × Sports

ストリート・マインド「スポーツもカルチャーも好奇心のままに」 ? 世界チャンピオンTokuraを作った映画、音楽、スケボーの話

Photography Ryosuke Misawa
Text Kunihiro Miki
Edit Mine Kan / Kunihiro Miki

競技であると同時に、音楽やファッションなどさまざまなカルチャーの交差点でもあるストリートスポーツ。オリジナリティのあるスタイルを持つために必要なのはトレーニングだけでなく、鋭い感性や確固たる哲学を持つこと。そんなストリートスポーツの一流選手たちのライフスタイルを探る。

今回のプレイヤーは、サッカーのリフティングやドリブルを技として磨き上げ、その技術力や芸術性を競い合う「フリースタイル・フットボール」の世界大会でアジア人初のワールドチャンピオンに輝いた経歴を持つTokuraこと徳田耕太郎さん。

競技にストイックに向き合いながらも、「スポーツやカルチャーも、自分のライフスタイルに合ったものを見つけるその過程自体が楽しい。本業も趣味も、フラットな付き合い方が良い」というオープンマインドな生き方を貫いてきた。

趣味やコロナ禍での日常についてのプライベートトークから、自らの好奇心と真摯に向き合う彼の人生観と、スポーツとカルチャーに対する絶妙なバランス感覚が垣間見えた。

「楽しめればOK」を伝えたい

徳田さんは中学のサッカー部に所属していた13歳のころにフリースタイル・フットボールに出会い、その後17歳のときに史上最年少で日本大会優勝。そして2012年、イタリアで開催された世界大会でワールドチャンピオンになった。彼のアクロバティックなオリジナル技「Tokura クラッチ」は世界中のフリースタイル・フットボーラーたちを魅了した。

その後も世界中で活動を続け、サッカーゲーム『FIFA 20』ではキャラクターとして登場するなど、日本人フリースタイル・フットボーラーの顔役として多くのフォロワーを生んでいる。

世界を魅了する、アクロバティックプレイ

「今年は大会がほとんどなくなってしまい大会用の練習メニューをしても今の状況にフィットしない。なので、最近では久々にみんなで集まってジャム(フリースタイラー同士で技を見せ合う合同練習会)をするようになりました。ジャムの大切さを改めて感じたし、それがあることによってモチベーションも生まれるんです。

フリースタイル・フットボールは(キャリアをスタートさせた)15年前とは比べものにならないほど市民権を得ました。その一方で競技性にばかり目が向けられている現状もあるので、最近スタートさせたYouTubeチャンネルでは、『自分らしいスタイルを見つけて楽しむ』というフリースタイルの原点の部分を掘り起こして発信していきたいと思っています」。

徳田さんは、いかに競技と長く付き合い、楽しみ続けることができるかを最優先に考える。そのために、厳しい練習を重ねることと同じくらい、「楽しめればOK」というポジティブなマインドを持つことにストイックだ。

気になることはとにかくやってみる。止まらない探究心

徳田さんがプライベートで情熱を注ぐスケボーやヒップホップ、DJ、映画などのカルチャーも、「楽しみ続ける」ために必要なもの。それらはお互いに良い影響を生んでいて、そこには本業と趣味という明確な棲み分けはない。好奇心の赴くままにフラットな気持ちで向き合うことが結果としてフリースタイル・フットボールを「楽しみ続ける」ことにつながっているようだ。

「スケボーは小学生のころに一度やって辞めていたんです。またやりたいなと思いながら、怪我が怖くて手を出してなかったのですが、5年前にコンプリートデッキを誕生日プレゼントでもらってからやるようになりました。

フリースタイル・フットボールとスケボーって、どちらも足を使っていろいろな技をやるし共通点が多いんです。でも、その場でやるフリースタイルとは違ってスケボーは走りながらトリックをやったり、地形を利用したりするおもしろさがありますよね」。

フリースタイル・フットボールでのプレイの発想をスケボーから学ぶことも多いそう

「ストリートカルチャーに目覚めたのは、ヒップホップを聴き始めたことがきっかけだったと思います。ヒップホップを聴くきっかけになったのはKREVAさんですね。狂ったように聴いていました。

愛媛から上京してからはブレイクダンスのイベントに遊びに行ったり、その流れでブレイクビーツが好きになったり。レッドブルが主催のイベントはよく遊びに行っていましたね。最近の日本のヒップホップは、メロウなもの好きで、PUNPEEさんや唾奇さんなんかはよく聴きます」。

家には綺麗に整えられたターンテーブルスペースも

「DJは、クラブイベントで共演したDJの方にやり方を教えてもらってからハマってしまって。スクラッチがやりたくて機材を揃えて、パソコンもDJをやるためだけに買いました。レコードは好きなアーティストのリリースがあった時に買っているのですが、レコードでミックスをするのはまだ自分には難しくて……。友達が来たときなんかはターンテーブルを使って遊んでいます」。

ストリートカルチャーに留まらず、昔から大好きな映画からもライフスタイルや競技人生に大きな影響を受けているという。最近は、毎晩ベッドルームにあるプロジェクターで映画鑑賞をしている。

「映画館の雰囲気も好きで、よく足を運びます。中学生のころに観た『ミリオンダラーベイビー』がとにかく衝撃的で。あのラストに持っていかれちゃって、イーストウッドの作品は一通り観ました。

自分は選手として大会で良い成績を残すことを目指してやってきたけど、結果がともなわなくても自分はここまでやったんだ、というところで満足できれば良いということとか、映画を通して生き方を学んだことは多い気がします」。

カルチャーが育んだアイデンティティ

スランプの時や気持ちが落ち込んだ時はコメディー映画を観たり、練習中はSoundCloudで好きなDJのミックスを聴いたりしているという徳田さん。カルチャーに触れることはリフレッシュになるだけじゃなく、フリースタイル・フットボールをやる上でのインスピレーションにもなっているのだ。

プロとしてのキャリアを続けるために、競技以外のことに常にアンテナを張り興味を持ったらためらわずに飛び込んでみる。一見逆説的だが、それが徳田さんの流儀だ。最後に、「楽しいこと、好きなこと」を見つけるコツについて聞いてみた。

「そこに使命感を持つ必要はないと思いますが、とにかく良いなと思ったことはやってみる。必要なものがあれば買ってみる。というアクションを起こすことは心がけています。分からなかったら人に聞く。楽しかったらとにかくやり続ける。

飽きちゃうこともあるけど、飽きることは悪いことじゃないと思うんです。僕も幼少期からスケボー、サッカー、卓球を経てフリースタイル・フットボールに行き着きましたから。

スポーツやカルチャーそのものを楽しむことももちろんですが、自分のライフスタイルに合ったものを見つけるその過程自体が楽しいじゃないですか。本業があって趣味は週1回やって、という考え方が日本では強いですが、もっとフラットな付き合い方で良いと思っています。いろいろなものに手を出して、並行してやってみると相互に良い影響が生まれるんじゃないかな」。

Profile

徳田耕太郎(とくだ・こうたろう)

13歳の頃に「NIKE フリースタイルフットボール」という本に影響を受けてフリースタイルフットボールを始める。2年後には愛媛県よりパフォーマンス活動を始め、その楽しさからその後も続けることを決意し、フリースタイルフットボールチーム「Team-Lingo」のリーダーを務めるなど、数々のステージを経験する。

2009年5月には初出場となる大会「Red Bull Street Style Japan 名古屋予選」に出場し、5位の成績を収めて決勝戦への切符を獲得。続く、全日本大会「Red Bull Street Style Japan Final」では史上最年少となる弱冠17歳で見事優勝を獲得し、 世界大会である「Red Bull Street Style World Final 2010」へ日本代表として出場権を獲得。そして翌年の2010年4月、南アフリカで開催された世界大会「Red Bull Street Style World Final」に日本代表として出場するも4勝2敗で惜しくも予選敗退。

その後、2011年3月にアブダビにて行われた「Masters of the Game」ではベスト6の成績を収め、 同年9月に行われた世界大会「World Freestyle Football Championship 2011」に日本代表として世界16名の出場選手に選抜され、自己最高となる4位入賞を果たした。さらに、同日行われたトリックコンテストでは日本人では初となる世界の舞台での優勝を獲得し技術の高さを世界に証明した。そして、2012年イタリアで開催された「Red Bull Street Style World Final 2012」にて日本人として初めて優勝し、大きな話題となった。

2014年には日清カップヌードルのCM 「サムライ in ブラジル」に出演。兜と甲冑を身にまといながらも、圧倒的なテクニックでサッカーボールを操る姿が大きな話題となる。

現在も、日本国内を中心に全国各地でパフォーマンス活動やレクチャー、クリニックなど精力的に活動している。

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