Story

Shoes × Fashion

COVER STORY異国情緒からアート・サブカルまで、Momとたどる横浜・コンテンポラリー・ディープツアー

Model Mom
Photography Cosmo Yamaguchi
Styling Masaaki Ida
Hair & Makeup Yosuke Akizuki(traffic)
Text Shota Kato(OVER THE MOUNTAIN)
Edit Hayato Narahara
Artworkニック・ケイヴ 《回転する森》2016年(2020年再制作) (c)Nick Cave

日本のシンボリックな港町でありながら、実にユニークな側面を兼ね備えている横浜。市内の一画に洋館建築のモダンな雰囲気が残されていれば、中華街はその真逆にあるようなオリエンタルでエキゾチックな手触り。気品や歴史をまといながらも独特な多国籍感が漂う横浜を、自ら「ラッパーでもバンドマンでもない」と発信する次世代マルチアーティスト、Momと歩いた。

現代アートに触れて再確認するアーティストとしてのこだわり

左/エヴァ・ファブレガス 《からみあい》2020年
右/ツェリン・シェルパ 《54の智慧と慈悲》2013年 Curtesy of the artist and Rossi & Rossi

ツェリン・シェルパ 《54の智慧と慈悲》2013年 Curtesy of the artist and Rossi & Rossi

Momはヒップホップとロックとポップスを軽やかに行き来するジャンル横断型のアーティストだ。楽曲制作をひとりでやりきるのが彼のスタイルであり、アートワークやミュージックビデオなども自身がディレクションするという徹底ぶり。そんな弱冠23歳のマルチアーティストと横浜の多面性を巡ってみた。

まず訪れたのは、現代アートの祭典として知られる横浜トリエンナーレ。横浜にアートの側面を確立させたグローバルな芸術祭だ。

カラー名は「マシュマロ」。アッパーは秋冬に合うスエード地で仕上げられている
VANS AUTHENTIC/¥9,350

普段あまり着ないというセットアップスタイルも、自前のハットをプラスして自然に着こなす

ミュージシャンはアートなどからインスピレーションを得ることもあるけど、Momは芸術祭もアート展も自発的には観に行かないという。「アートには興味があるけど、家でレコードジャケットやアートブックを眺める時間のほうが肌に合っているんです」。なるほど。自宅で制作する宅録スタイルならではの回答だ。音楽をつくる環境がそばにあることで、インスピレーションソースに触れてすぐに制作に移れるのだから。

それでも今回は「いろいろなアイデアを体験したことでモチベーションを得ることができました」と振り返る。「作品のなかに立ってみて思ったのは、やっぱり体験としてモノと向き合うことで伝わってくるものがあるんだなって。僕はデジタル・サブスク世代にカテゴライズされがちだけど、CDやレコードから自分の作家性を伝えることにこだわりたいんです」。

私物をミックスして等身大を意識する

次の目的地は、西洋建築が立ち並ぶ赤レンガ倉庫エリア。今回の撮影は初めてスタイリストと現場を共にしたMomだが、コーディネートには彼の私物もミックスされている。「自分が好きなものに囲まれていたいんです。そのほうが自然な表情を出せるし、嘘をつきたくないというか」。被写体として演じる一方で、つねに等身大を意識する。gravisのローファーもバーガンディーのワイドパンツも、ヒップホップやスケボーから影響を受けてきた彼だからこそ違和感なく着こなせるのだろう。

チェックのトレンチコートに合わせて、その他アイテムを自らコーディネート。Tシャツは2000年代ヒップホップの重要アーティスト、50 Cent

ヒールカーブにはワンポイントのロゴがあしらわれている
gravis ODJICK TASSEL 25222/¥11,000

もともとギター少年だったMomがトラックメイキングを知ったのは、高校に入学してからのこと。当時の音楽シーンにはロック的な宅録アーティストが多かったが、あまり共感できなかったという。「ひとりでやれるスタイルはもっとあるはず。それを明確にしてくれたのがチャンス・ザ・ラッパーでした」。自身にとってヒップホップやR&Bを掘り下げるきっかけとなった存在は、先進的なサウンドアプローチなのにマニアックに聴こえず、それでいて多くの人の心を動かしていた。

ひとりでやりきろうとするのは、明確な脳内イメージを他人に共有することで、その解像度が薄れてしまう恐れがあるから。「誰かとやることで自分の楽曲が思いもしなかった方向に解釈されておもしろいと思う部分もあるし、そうじゃないと思うこともあります」。創作に携わる他者は、今のところ撮影を委ねるカメラマンくらい。だけど、いつかは音楽制作を誰かと共にしたい気持ちがある。それがいつになるのかは自分自身にもわからない。

スケートビデオの質感を音楽で表現したい

Momが音楽をつくるうえで意識していることのひとつは、時代の空気感を切り取ること。それはスケートボードからの影響が大きいという。スケボーに憧れるようになったのは、1990年代のスケートビデオがきっかけだった。「個性だけで成立するスケートビデオのファッショナブルな質感が好きなんです。僕の音楽にはエクスペリメンタルな側面があるんですけど、複雑なことを身軽に見せようとする意識はスケートカルチャーを参考にしていて」。

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自前のスケボーを滑らせて足を運んだのは、昭和47年に建てられた横浜の老舗、エイトセンター。最近では黄金町アートブックバザールなどの、アートをテーマにした日ノ出町 〜?黄金町一帯の再開発と相まって、よりカオティックでディープな雰囲気が漂うサブカルスポットとしても注目の場所に。年季の入ったフロアにはバーやスナックなど、さまざまな酒場が軒を連ねている。

落ち着いたビンテージ風レザー仕様のスーパースター
adidas Originals SUPERSTAR FY3010/¥9,889

地下1階のジャズバー「shelter people」のレコードプレイヤーの針を落とす。この日、Momにはレコードを持ってきてもらった。ジャズを大胆にサンプリングしていた90年代ヒップホップを代表する、ファーサイドの1stアルバムにして大名盤『Bizarre Ride II The Pharcyde』だ。大音量で聴く愛聴盤のレコードならではの温かい響きに感動した。「実は家にレコードプレイヤーもなければスピーカーもないんですよ(笑)」。いつも音楽はヘッドフォンで聴いているというギャップも意外性のあるものだった。

スニーカーに合わせてヴィンテージライクなレザーコートをセレクト。柄のニットにシルバータブのジーンズをミックス、レトロなストリートスタイルに

shelter peopleは13時オープン。店内で流れているのは、サブスクにもあまり上がっていない50 〜 60年代ヨーロッパジャズがメイン。レコードの持ち込みも大歓迎とのこと

レコードを聴いているなかで改めて気づいたことがある。それは横浜トリエンナーレで明かしてくれたアルバムに対する執着だ。「デジタル配信している僕の音楽は20年、30年後に残っているのかと疑問に思う瞬間があるんです。モノとして後世に刻むためにもCDやレコードでアルバムを出し続けていきたいですね」。

これから作品を積み重ねていくなかで、Momが何に影響を受けてどう変化していくのか。そして、誰と関わっていくことになるのか楽しみだ。もしもひとりでやり続けていくことになったとしても、それは彼らしい選択だと思う。横浜で体感した現代アートとディープなサブカルスポット。新たなインプットから再確認したのは自身が音楽をつくる意義だった。

横浜トリエンナーレ Coordinate

セットアップ、ネックホルダー/スタイリスト私物
Tシャツ/ato/¥18,700/シアン PR
その他/モデル私物

赤レンガ倉庫エリア Coordinate

コート/Sugarhill/¥75,900/4K
その他/モデル私物

エイトセンター Coordinate

コート/DAIRIKU/¥220,000/4K
ニット/Faccies/¥46,200/4K
Tシャツ/ato/¥18,700/シアン PR
パンツ/Faccies/¥38,500/4K
その他/モデル私物

問い合わせ先
シアン PR/03-5414-5107
4K/03-5464-9321

Event Information

ヨコハマトリエンナーレ2020
AFTERGLOW―光の破片をつかまえる

会期: 2020年7月17日 〜 10月11日

会場: 横浜美術館、プロット48

開場時間: 10:00 〜 18:00(10月2,3,8,9,10日 〜 21:00、11日 〜 20:00)

休場日: 木曜日(10月8日は開館)

料金: 一般 2,000円 / 大学生 1,200円 / 高校生 800円

※横浜美術館への入場は日時指定が必要。プロット48は横浜美術館と同日に限り自由に入場が可能。

チケット購入・詳細は公式HPにて
https://www.yokohamatriennale.jp/2020/

Shop Information

GRAND STAGE 横浜西口店

神奈川県横浜市西区南幸1-11-2

TEL: 045-317-8481

営業時間: 11:00 〜 21:00

https://map.abc-mart.net/site/detail/id/431

Profile

Mom(マム)

シンガーソングライター/トラックメイカー。現行の海外ヒップホップシーンとの同時代性を強く感じさせるサウンドコラージュ・リズムアプローチを取り入れつつも、日本人の琴線に触れるメロディラインを重ねたトラック、遊び心のあるワードセンスが散りばめられた内省的で時にオフェンシブなリリックに、オリジナリティが光る。音源制作のみならず、アートワークやMusic Videoの監修もこなし、隅々にまで感度の高さを覗かせる。2018年初頭よりMomとしての活動を本格化。同年11月、初の全国流通盤『PLAYGROUND』をリリース。Apple Musicが選ぶNEW ARTISTやタワレコメンにも選出され、翌年、chelmicoを招き渋谷WWWで開催したリリースパーティを即完させる。2020年7月、3rd album『21st Century Cultboi Ride a Sk8board』をリリースした。

https://www.mom-official.jp/

YouTube https://www.youtube.com/channel/UCHrXihgUYU5-0518aI_nndg

Instagram @mom_0fficial

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