モデルとしてハイファッションのジャンルを中心に活躍するモトーラ世理奈。それと同時に女優としてのキャリアも緩やかに積み重ねてきた。2020年には歴史のある新人女優賞にも輝き、その注目度はファッションの枠を超えて、お茶の間にも広がりつつある。そんなモデルと女優を行き来する彼女と地元・東京の思い出の場所を歩いた。

青春時代を過ごした西東京エリアを歩く

西武鉄道新宿線の武蔵関駅。東京だけど都心でも地方でもない、どちらかといえば郊外寄り。そんなニュートラルなエリアでモトーラ世理奈は青春時代を過ごした。

「地元は練馬で、武蔵関駅が最寄りの石神井高校に通っていたんですよ。この武蔵関公園に行ったことはないかな。新しい公園があって、そこには学校帰りによく行ってました。男女7人くらいの友だちでピクニックとかして」。

学校帰りには吉祥寺に立ち寄ることも多かった。この日に歩いた吉祥寺の住宅街や路地裏は偶然にも当時散策していた場所。一番仲良しだった友達とこの辺りで写真を撮り合ったりしていた放課後の思い出が蘇る。

「細い道を通って、誰もいないところを探検する感じが好きだったんです。1日に何百枚も携帯で写真を撮ってましたね。セルカ棒を持って自撮りしたり。JKだったから(笑)」

モデルの仕事を始めたのは高校1年生の頃。きっかけはスカウト、場所は一番わかりやすい原宿だった。声を掛けられて素直にうれしかった。ずっとファッションの中にいたい。その選択肢の中にモデルと女優があったからだ。

「高1から仕事を始めたんですけど仕事も学校も楽しくて。ただ私たちの前の代から校則が厳しくなったんですよ。それまでは自由な校風で髪を染めたり、私服でよかったのに、黒髪・すっぴん・制服みたいに決まってきて」。

モデルの仕事だけでなく厳しくなった校則の影響もあって、学校では周りに合わせようとした。それに加えて、自分は父親がアメリカ人、母親が日本人のハーフ。もともと髪の色も茶色く、普通にしているだけで他の人とは違うところがあることを自覚していた。

「担任の先生がとても理解のある人で、それがあなただから、とわかってくれて。でも、スカートの丈だけはちょっとズルしてました(笑)。ただでさえ普通の都立高校の学生なのに雑誌に出ているから、どうしても目立っちゃう。学校では特別な感じには思われたくなかったし、なるべくみんながいいとするものを基準にして、何もかもそこに合わせようとしていましたね。別にストレスではなかったけど、モデルの仕事をしていくうちに、みんながかわいいものがすべてではないことに気づいてきて。それは仲の良い友達にも出していなかったですね。撮影の話とかもしなかったかな」。

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ファッションの未知なる世界に飛び込む面白さ

とにかくモデルの仕事が楽しかった。撮影を重ねる度に自分の知らない世界が広がっていった。

「みんなが授業している間に、私はいま千葉の海にいるんだ(笑)とか、いろいろなファッションを体験できることとか、何もかもが楽しくて。一番大きかったのは、雑誌のファッションページをたった1ページつくるだけなのに、たくさんの人たちが関わっているのを知れたことですね」。

最初は出来上がった誌面を見ても、そこに自分が載っていることに違和感があった。ファッションシューティングの醍醐味がわかるようになったのは、高校2年の時に経験した『GINZA』の現場だったと振り返る。今回の衣装のスタイリングを担当する山本マナさんとのはじめての仕事だ。

「『GINZA』でマナさんとはじめて一緒になって、その撮影で大きく変わったなと思います。古くてかっこいい世田谷区役所の中で撮って、衣装はシャネルと古着の組み合わせ。真っ赤なリップ、髪をアップにして、鏡に映る自分が私には見えなくて。服もすごくかわいいし、シャネルなんてはじめて着るし。黒い幕を被って撮るカメラもはじめて見たし。いつもは何枚も撮られるのに枚数もめちゃくちゃ少なくて。はじめて尽くしだったけど、いつもと違う自分が宿った感じがあったんです。そこで撮られた写真を見たら、私が知らない自分がいることに驚いて。そのときの経験がきっかけで、みんなでつくっているなかに自分もいるんだってことを知りました」。

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モデルと女優。求められているものと自分らしさのバランス

『装苑』『VOGUE』『GINZA』などの雑誌をはじめ、ハイファッションのモデルとしてのイメージが定着しながら、企業広告にも引く手あまたの存在に。アンニュイで儚い表情と雰囲気、空気に身を任せるような独特なポージングは他のモデルにはない唯一無二の個性となって、映画とドラマでもモトーラ世理奈のクレジットを見かけるようになった。女優としての本格的なキャリアは2018年に主演を務めた『少女邂逅』がスタートライン。今や「第94回キネマ旬報ベスト・テン」「第29回日本映画批評家大賞」において、新人女優賞を受賞するほど評価されている。

「事務所に入ってからすぐにレッスンに行くようになるんですけど、演技や発声のレッスンが全然好きじゃなくて。あるときにマネージャーさんと『装苑』の編集部に顔見せに行ったら、ちょうどニューカマーのモデルを探していたタイミングだったんですよ。それがきっかけでモデルの仕事がスタートしたんです。その一方でドラマや映画のオーディションも受けていて、はじめて受かったのが『少女邂逅』なんです。絶対に落ちたと思っていたのに。今もまだ演技について探っている途中だけど、『少女邂逅』の撮影のときに枝優花監督が何もわからない私にみっちり付き添ってくれて。うまく言葉にできないけど、そこで学んだ経験が大きいですね」。

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モデルと女優に共通しているのは、求められているものを探りつつ自分の気持ちも満たしていくこと。それができたときの達成感には言葉にできない楽しさがある。もっといろいろな世界を見てみたい。高まる好奇心の一方で、抱え続けてきたハーフモデルならではのコンプレックスも克服したいと強く願う。

「私、ハーフだけど英語を喋れないんですよ。小さい頃からそれがずっと嫌で。2歳くらいから英会話スクールに通っていたんですけど、当時は全然やりたくなくて。お父さんが仕事でずっと海外にいる生活だったから、日常会話は日本語が当たり前の環境だったんです。今でも聞かれます、『英語を喋れるからいいね』って。それで『喋れないよ…』って返すみたいな。海外の人と知り合っても、もっと深く仲良くなりたいのに言葉が壁になることってあるじゃないですか。そのときの悔しさといったら」。

いろんな世界に自分らしく飛んでいきたい。思い描く未来の姿

もうひとつ、第一印象から判断されがちなことがある。それは「人見知りでしょ?」と聞かれることだ。

「人見知りじゃなくて、恥ずかしいだけなんです(笑)。会った人全員と壁がないくらいに仲良くなりたくて。いろんなおもしろい人たちと出会えるのはこの仕事の楽しいところですね。出会いから知らない世界が広がっていったから」。

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「キネマ旬報ベスト・テン」の表彰式で、恥ずかしがりながらも「私が今ここにいるのは、たくさんの方たちのおかげです。本当に感謝しています。これからも素晴らしい方たちと出会って、いろんな世界に自分らしく飛んでいきたいと思います」と壇上からスピーチした。言葉は少ないけれども彼女らしいコメントだ。高校生の頃からユニークな大人たちに囲まれて、普通の高校生ができない経験を積み重ねてきた。22歳となった今は同年代のクリエイターとの関わりも増えてきた。理想の仕事の比率はモデル7割、女優3割。どちらも行き来しながら緩やかにグラデーションを描いて、一つひとつの出会いから自分の世界を広げていく。色とりどりのファッションにときめきながら。

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Profile

モトーラ 世理奈(もとーら・せりな)

モデル、女優。1998年10月9日生まれ。東京都出身。2015年1月号の雑誌『装苑』にてモデルデビュー。その後も数多くのアパレルブランドやファッション誌の表紙を飾る。2016年11月にリリースされた、RADWIMPS『人間開花』アルバムジャケットに起用され、話題となる。映画『少女邂逅』では約200人のオーディションから選ばれ主演を務めた。2018年には、女優の二階堂ふみが初めてカメラマンに挑戦した写真集『月刊 モトーラ世理奈・夏 写真 二階堂ふみ』の被写体となる。2019年、映画『21世紀の女の子 ~ out of fashion ~ 』主演、映画『おいしい家族』に出演、映画『ブラック校則』ヒロイン役を務めるなど、女優としても数々の映画でキャリアを積む。7月には1stシングル「いかれたBaby」をリリース。2020年は、映画『風の電話』、『恋恋豆花』が公開、TX「東京デザインが生まれる日」と主演作が続く。

Instagram @sereeeenam

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