Story

Shoes × Culture

巡都百景浅草、取り戻しはじめた街の表情

Photography Harumi Shimizu
Text Shota Kato(OVER THE MOUNTAIN)
Edit Kunihiro Miki

東西南北、東京の街はエリアごとに異なる文化や歴史を持っている。繁華街でなくとも、視点の持ち方次第で街は発見に満ちたギャラリーにも博物館にもなる。
今回は、気鋭のフォトグラファー清水はるみと浅草の街を巡る。東京屈指の観光名所も、コロナ禍では国内外の観光客が激減し一時は閑散としていたが、夏の終わりごろから次第に客足が戻ってきた。この6月に高架下に新たにオープンした商業施設、東京ミズマチにも本格的に人が集まり始めている。観光スポットからかっぱ橋道具街にかけて、華やぎを取り戻し始めた浅草の表情を切り取った。

「今年も早いもので10月だねー。あと3ヶ月なんて信じられなーい」なんて毎年のように口にしているけど、2020年の体感は過去最高の速さだと思う。その理由はひとつしか考えられない。そう、新型コロナウイルスのせいだ。このままだと、人生あっという間に終わってしまうんじゃないか。

自粛期間はなるべく家に籠り、自粛から自衛モードに変わった今でもリモートワークは定着している。暮らし方も働き方も今までと違う。それでも僕らは外出や国内旅行の機会を求めて、街は人が行き交う風景を少しずつ取り戻している。

一時はゴーストタウン化した浅草も、以前までとはいかないけれども、再び活気にあふれてきた。浅草仲見世商店街の商店のシャッターが開き、ホッピー通りの居酒屋の露天席は満席に近いにぎわいだ。季節外れなのに浴衣を着ているカップルたちは、夏に予定していた浴衣デートをどうしても果たしたかったのだろう。それにしても浴衣にマスクを合わせる世の中になるなんて、誰が想像できただろうか。

Made in USAのフラッグシップモデルとして2010年に登場した「2002」。「Nergy」「ABZORB」といったニューバランスの代表的なテクノロジーを採用したパフォーマンスシューズML860 v2のハイスペックソールと融合したニューモデルML2002Rが登場。
New Balance ML2002RA/¥17,600

昔ながらの下町の景色が色濃く残る浅草だが、未来的な輪郭もつくられつつある。今年の6月には、浅草とスカイツリーを結ぶ高架下に東京ミズマチがオープンした。外国人観光客が訪れるのはまだ先のことだけれど、下町風情を代表する浅草には、やっぱり「元気」がよく似合う。そんな浅草がお笑いの伝統的な地であることを踏まえて、謎かけでもしてみたい(大丈夫か?)。「“活気が戻った浅草”とかけまして、“10年かけて復刻されたNew Balance 2002”とときます」「その心は」「どちらも待ち(街)焦がれていたでしょう」御後がよろしいようで……。

浅草には道具の街という表情もある。それを象徴しているのがかっぱ橋の問屋街だ。目印はニイミのジャンボコック像。この街では調理器具から食器まで、プロユースから一般家庭向けまで、最新のものからレトロな商品までと、ありとあらゆる食の道具が手に入る。いつかは名入りの包丁や鉄のフライパン、銅の卵焼き器なんかをディグってみたい。物欲を刺激するスイッチがいたるところに仕掛けられている。

そんなキッチンツールのポータルサイト的な問屋街だからこそ、商品ひとつをとっても、そのカテゴライズの仕方に驚かされる。たとえばクッキーの型抜きであれば、一般的には犬や猫など動物の大枠の種類で展開されているが、プードル、ドーベルマン、コッカスパニエルなど、犬種にまで細分化されているのだ。

定食屋や居酒屋の装飾に使われるメニュー札なんかも、とにかく種類が豊富。飲食店関係者じゃないのに、用途も決めずに買いたくなってしまう。ショーケースの主役である食品サンプルも、和洋中、その他多国籍料理までと、ありとあらゆるものを取りそろえる。その技術を応用して巨大なカブトムシの模型までつくってしまうなんて、なんでもありの自由さに笑えてくる。

観光地とピンポイントでマニアックな問屋街のグラデーションこそ、浅草の魅力なのだと思う。そんな2つの世界がクロスオーバーする街には、さまざまな人種でにぎわう風景がよく似合う。

Profile

清水はるみ(しみず・はるみ)

1989年生、お茶の水女子大学卒業。スタジオアシスタント、書店での写真集担当を経てフリーに。風景とスティルライフを中心に撮影している。主な個展に「The Plants in the Voynich Manuscript」(2019年, IMA gallery)、「OPEN FRUIT IS GOD」(2015年, gallery blanka)などがある。

http://shimizuharumi.com/

Profile

加藤将太(かとう・しょうた)

編集者。1981年12月28日生まれ、山梨県笛吹市(旧春日居町)出身。紙・ウェブ媒体の企画・編集・執筆からトークイベント・番組の司会進行まで幅広く担当。2011年にウェブマガジンCONTRASTの立ち上げに携わり、2013年7月より世田谷は松陰神社商店街を活動拠点とする。翌年には「OVER THE MOUNTAIN」の屋号での活動をスタート。2016年9月に山梨県甲府市にVISUAL AND ECHO JAPANとの共同オフィスを開設し、東京と山梨を行き来するワークライフを送っている。今日も明日もこれからも、ひと山を越え続ける。

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