東西南北、東京の街はエリアごとに異なる文化や歴史を持っている。繁華街でなくとも、視点の持ち方次第で街は発見に満ちたギャラリーにも博物館にもなる。今回は、気鋭のフォトグラファー清水はるみとスカイツリーのお膝元、押上と曳舟を巡る。

2012年、かつては東武線の車輌基地だった場所に東京スカイツリーが完成した。そのお膝元にある押上は一躍世界的な観光地へ。この時を境に押上は決まって「懐かしさと新しさが同居する街」と表現されるようになった。目に見えるわかりやすさはスカイツリー周辺のこと。街全体でとらえれば、押上はやはり古き良き雰囲気が残る東京の下町だと思う。

Reebok CL LEGACY FY7745/¥10,439

実際に押上駅から曳舟方面に歩いてみると、そこだけ取り残されたようなトタン屋根の平屋が現れる。さびついた外観はまさに昭和の佇まいだ。その前で路駐している東武タクシーのドライバーのおじいさんは休憩中なのか、それとも勤務が終わってひと息ついているのかはわからない。

そういえば、この辺りには深夜1時半にオープンする大衆食堂「菊屋」があることを思い出した。深夜勤務を終えた東武タクシーのドライバーさんたちにも愛される地元の店は、今どんな営業時間で毎日を営んでいるのだろうか。そんなことを考えながら、純喫茶マリーナの食品サンプルが並ぶショーケースを眺めていた。

Reebok CL LEGACY FY7747/¥10,439

街並みにレトロな配色や味のある書体を見かけるのも下町っぽい。昔ながらの写真屋さんは「早い・きれい・安い」をこれみよがしにアピールしている。はんこ屋さんは「特急は60分」と仕上がりの早さが売りらしい。

僕の地元にも同じようなお店がまだいくつも残っている。真っ先に思い出すのは、巨大な黄色い看板に「ガンが治るパン」と書かれた広告的にアウトなパン屋。一見さんを寄せ付けない外観なのに、それでも今も営業し続けている。昔は「どう見えるのか」よりも「何を訴求するのか」のほうが大事だった部分があるのかもしれない。

Reebok CL LEGACY FY7748/¥10,439

今では「ブランディング」を意識した、それっぽいインフルエンサー、食べ物、衣類……。とにかくいろいろなヒトモノコトが増えた。自分の見せ方を気にせずに今も残り続けているお店が羨ましい。いつから、僕たちはいいねやフォロワーばかりを気にして生きていくようになったのだろう。鳩の街通り商店街を歩きながら、ふと思った。この日に履いていたReebokのスニーカーのように、クラシックなスタイルが今はちょうどいい。

Profile

清水 はるみ(しみず・はるみ)

1989年生、お茶の水女子大学卒業。スタジオアシスタント、書店での写真集担当を経てフリーに。風景とスティルライフを中心に撮影している。主な個展に「The Plants in the Voynich Manuscript」(2019年, IMA gallery)、「OPEN FRUIT IS GOD」(2015年, gallery blanka)などがある。

http://shimizuharumi.com/

Profile

加藤 将太(かとう・しょうた)

編集者。1981年12月28日生まれ、山梨県笛吹市(旧春日居町)出身。紙・ウェブ媒体の企画・編集・執筆からトークイベント・番組の司会進行まで幅広く担当。2011年にウェブマガジンCONTRASTの立ち上げに携わり、2013年7月より世田谷は松陰神社商店街を活動拠点とする。翌年には「OVER THE MOUNTAIN」の屋号での活動をスタート。2016年9月に山梨県甲府市にVISUAL AND ECHO JAPANとの共同オフィスを開設し、東京と山梨を行き来するワークライフを送っている。今日も明日もこれからも、ひと山を越え続ける。

記事内のアイテムをチェック
記事内のアイテムをチェック

Related Item 関連商品

Related Story

同じシリーズ一覧を見る

Shoes × Culture

同じカテゴリー一覧を見る