東西南北、東京の街はエリアごとに異なる文化や歴史を持っている。繁華街でなくとも、視点の持ち方次第で街は発見に満ちたギャラリーにも博物館にもなる。今回は、気鋭のフォトグラファー清水はるみと初詣の客でにぎわう新井薬師と中野エリアを巡る。

新しい年を迎えた。2020年がどんな年だったのか、それをあえて言葉にする必要はない。マスク姿のみんながきっと同じことを思っているからだ。2021年こそは良い年にしたい。そう思いながらも初詣に行きたい気持ちはすこし後ろめたかったりした。でも、佐野厄除け大師や川崎大師のテレビCMは年末年始の特番の合間に変わらず流れているじゃないか。半分はCMのせいにして、やっぱり初詣に行こうと思った。もちろん、感染対策に気をつけながら。新年だからと思いきって、紅白カラーのスニーカーを履いて。

のちの「OLD SKOOL」の原型として1977年に誕生した「Style 36」。細身のフォルムや浅いノーズ、ステッチデザインなど、レトロな雰囲気も醸しながらも普遍的な魅力を持った一足だ
VANS Style 36/¥7,700

「東の浅草、西の新井薬師」と呼ばれるほど、どちらの街にも名高い寺がある。新井薬師のことは知っていたけれども、実はそれが通称で、「新井山梅照院薬王寺」が正式名称だということを知らなかった。いわゆる御詣りで訪れる参詣寺院は参道が商店街になっていることがほとんど。新井薬師の場合は「薬師アイロード」がそれにあたる。

昔ながらの店が軒を連ねるなかに新しい店もちらほら見られるものの、テイストとしては昭和寄り。よく目を凝らしてみると、思わずツッコみたくなるディテールのある店も少なくない。20時閉店の張り紙が現実を突きつけつつも、ノスタルジックな雰囲気の街並みに心が和む。

参道を歩いてほどなくすると新井薬師へ。由緒正しい古寺はほど良い規模感で風情もあって、そのちょうど良さが気に入っている。初詣は決まってたくさんの人たちでにぎわうけれど、今年は趣がありつつも明らかにいつもと違った。仕方ないとはわかっていながらも、境内にビニールシートは不釣り合いだし、神職にマスクもインカムも似合わない。

そんな違和感に戸惑う初詣。それでも露店を見つけると、やっぱり気持ちがたかぶってしまうものだ。たこ焼きを食べたら射的へ。宝釣りも含めてこの類いのゲームは、いわゆる一等レベルの景品が当たった試しがない。完全な出来レースだと思っているのに、今日こそはとやりたくなってしまう。案の定、この日もハズレだった。コワモテの店主に「デカいやつ、撃ち落とせなくないですか?」と聞いてみると、「4、5人とかで同時に撃てばいけなくはない」とまさかの答えが返ってきた。目から鱗が落ちるとはこのことか。

ところで今年の干支は丑。新井薬師で引いた吉のおみくじには、「身辺の和やかさに気を許して楽しみに耽っていると損失があったりする」と書いてあった。今年は手堅くいこう。丑、さながらの牛歩で、ゆっくりと着実に。

Profile

清水はるみ(しみず・はるみ)

1989年生、お茶の水女子大学卒業。スタジオアシスタント、書店での写真集担当を経てフリーに。風景とスティルライフを中心に撮影している。主な個展に「The Plants in the Voynich Manuscript」(2019年, IMA gallery)、「OPEN FRUIT IS GOD」(2015年, gallery blanka)などがある。

http://shimizuharumi.com/

Profile

加藤将太(かとう・しょうた)

編集者。1981年12月28日生まれ、山梨県笛吹市(旧春日居町)出身。紙・ウェブ媒体の企画・編集・執筆からトークイベント・番組の司会進行まで幅広く担当。2011年にウェブマガジンCONTRASTの立ち上げに携わり、2013年7月より世田谷は松陰神社商店街を活動拠点とする。翌年には「OVER THE MOUNTAIN」の屋号での活動をスタート。2016年9月に山梨県甲府市にVISUAL AND ECHO JAPANとの共同オフィスを開設し、東京と山梨を行き来するワークライフを送っている。今日も明日もこれからも、ひと山を越え続ける。

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