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アイコニックアイテムハイテクシューズをストリートでたのしむ、革新的な機能に富んだモデル ―NIKE AIR MAX 97

Text Hiroshi Sato
Illustration Atsushi Ave
Edit Momoko Naito

ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。
今回のアイテムは、1997年に当時最先端のスニーカーテクノロジーを搭載して発売された「NIKE AIR MAX 97」。2017年にデザイン誕生20周年を記念して発売された復刻モデルの世界的ヒットも記憶に新しいハイテクスニーカーを紹介する。

水面に広がる波紋からインスピレーションを得たスニーカー

アッパーのステッチを再構築したNIKE AIR MAX 97 G。シルバーバレットのレガシーを引き継ぎ、2020年1月に発売した

つま先からヒールへと連なるラインで円を描くようにデザインされたAIR MAX 97。そのプロダクトネームのオリジナルは1997年に発売されたハイテクランニングシューズ。スタイリッシュなアッパーのラインは、デザイナーのクリスチャン・トレッサーが水面に雫が落ちたときに広がる波紋からインスピレーションを得たと語り、そのディテールの美しさから、男性だけでなく女性からも人気を集めている。

1997年当時に話題を集めたのが“シルバーバレット”のニックネームで呼ばれる、アッパーをオールシルバーに染めたファーストカラーだ。新幹線やMTBに影響を受けたと伝えられるメタリックカラーはデザイン面だけでなく、シューレース周りにリフレクター素材を使用し、夜間のランニングに配慮したもの。当時はストリートファッションのメインストリームがアメカジから裏原系へと急速に移行していたタイミングで、スニーカーに求められる要素も変化していた頃。そのため、NIKEのハイテクモデルというだけでは売れなかった時代だったのだが、AIR MAX 97の完成度は“シルバーバレット”を筆頭に多くのスニーカーファンに高く評価され、好調なセールスを記録していた。

シリーズ初、フルレングスのビジブルエアを搭載

スニーカーファンを魅了した、ソール全面に配するビジブルエアユニット

革新的なアッパーのデザインが人気を集めたAIR MAX 97は、NIKEが誇るハイエンドランニングシューズらしく、テクノロジー面でも大きな進歩を遂げている。その進化の象徴がAIR MAXシリーズ初となるフルレングスのビジブルエアユニットだ。NIKEの伝説的なデザイナーであるティンカー・ハットフィールドが1987年に「AIR MAX 1」を誕生させて以来、ビジブルエアユニット領域の拡大はAIR MAXの進化に欠かせない要素のひとつだった。実際に「AIR MAX 90」や「AIR MAX 93」、そして「AIR MAX 95」など、ビジブルエアユニットが大型化される度にNIKEが大々的なプロモーションを展開している。

そしてAIR MAX 97では、つま先からヒールまでビジブルエアユニットが搭載されている。エアユニット自体はこれ以降も進化を続けておりスニーカーテクノロジー史としては通過点だが、ビジブルエアユニットの大型化に心を躍らせていた当時のスニーカーファンに、AIR MAXシリーズの到達点という印象を与えたに違いない。もちろんAIR MAX 97のエアユニットは見た目だけではなく、ランニング時にかかる衝撃を考慮して、異なる気圧のエアチャンバーを組み合わせた機能的なものだ。そのチューニングはランニング時だけでなく、普段使いのスニーカーとしても履き心地を向上させている。その機能は復刻版にも受け継がれ、現代のスニーカーファンも納得の一足に仕上がっている。

2017年の復刻モデルがAIR MAX 97人気を再加速させた

アッパーに約55,690個のスワロフスキー・クリスタルを使用した、スワロフスキーコラボ

デザインとテクノロジーの両面で評価を集めたAIR MAX 97がファッションアイテムとして定着したのは、2017年に発売された復刻モデルの存在が欠かせない。デザイン誕生20周年に合わせてラインナップした復刻モデルには、“シルバーバレット”をはじめとするオリジナルカラーに加え、多彩なバリエーションがラインナップ。特にロンドンでグライムシーンを牽引するMCのスケプタや人気のスニーカーブティック、スワロフスキーとのコラボモデルは世界中のスニーカーヘッズを熱狂させた。

グライムMCのスケプタとコラボしたAIR MAX 97 SK。彼のルーツであるモロッコの旅からインスピレーションを受けたモデル

その盛り上がりは1997年当時を凌駕するもので、それ以来AIR MAX 97はストリートシーンに欠かせない主役のひとつとして広く認知されるようになったのだ。そのコラボモデルの中でトピックとなるのが、LAやNY等に店舗を構えるヴィンテージショップ“Round Two”のオーナーであるショーン・ウェザースプーンが手掛けた一足だ。彼が提案したコラボモデルはAIR MAX 97のアッパーにAIR MAX 1のソールを組み合わせたハイブリッドモデルである。そのアッパーは80年代にNIKEがリリースしたキャップからインスパイアし、カラフルに彩られた。メタリックカラーやワントーン系がAIR MAX 97の王道という、それまでの常識を覆したのだ。

コーデュロイ素材のショーン・ウェザースプーンコラボは、ショーンが使いたかったパステルカラーから、落ち着いたイエローを中心とした配色に。AIR MAX 97とAIR MAX 1のハイブリッドデザイン。

2017年の爆発的なヒットを経て、現在の店頭にはメタリックカラーやモノトーンモデルに加え、ポップなカラーに染まるAIR MAX 97が並んでいる。その幅広いラインナップは1997年のオリジナルを知るファンだけでなく、直感でスニーカーを選ぶ若い世代のスニーカーヘッズや女性にも好まれコーディネートの足元に取り入れられている。アイコニックアイテムと讃えるに相応しいAIR MAX 97の価値観は、2017年に確立されたと評しても過言では無いだろう。

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