ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは、英国のクラフトマンシップが込められたNew Balanceの“永久定番”スニーカーである「576」と、576から派生して世界で最も履かれるNew Balanceのシューズへと成長した「574」。さらに最新のトレンドを反映してアップデートされた「57/40(フィフティセブン/フォーティ)」まで、576を源流とする歴史と主要なバリエーションをピックアップ。それぞれのプロダクトの特性を再確認して、次に選ぶべき一足のヒントを見つけよう。

不整地にも対応するランニングシューズとして誕生した「576」

New Balanceというよりも、世界のスニーカーカルチャーにとって大切なヘリテージモデルである「576」。1988年生まれのデザインは、発売から30年以上を経た現在でも少しも魅力は失われず、いつの時代に買い直してもそのたびにフレッシュな感動が楽しめる。このスニーカーに対して度々“永久定番”というキーワードが使われるのも納得の完璧な仕上がりだ。いまではストリートシーンの定番となった576は、もともと舗装されていない路面に対応するランニングシューズとして開発された。

「576」はMade in U.K.と呼ばれるように、英国で生産された復刻モデルが店頭に並ぶ

同じ1988年生まれの「996」と比べると悪路でのグリップ性に働きかける溝の深いアウトソールを採用し、SL-2と呼ばれるやや幅広なラストを採用。路面のコンディションを問わず高いグリップを発揮するソールとボリューム感のあるアッパーの組み合わせが、永久定番として長く愛される理由のひとつ。時代が求めるさまざまなニーズに対応して派生モデルを誕生させた576は1990年代の後半にラインナップが整理されている。Made in U.K.モデルの素材感や丁寧な縫製が醸し出すクラフトマンシップには多くのNew Balanceファンが共感し、相棒のような存在なのかもしれない。

576のデザインを受け継いだ「574」

576のラインナップが整理される過程で、独立したモデルとして扱われるようになったのが「574」だ。576のデザインと快適な履き心地を受け継ぎ、より身近なスニーカーとしてのポジションが与えられたプロダクトである。現在では英国のクラフトマンシップが感じられる576に対し、アジアで生産されるコストパフォーマンス重視のスニーカーが574と認識しているスニーカーファンが多いかもしれない。ディテールにフォーカスすると、現在発売中の576のミッドソールにEVA素材を圧縮成型したクッショニング素材であるC-CAP構造が搭載されるのに対し、574ではEVA素材とポリウレタンを積層したENCAP構造が使われ、どちらもタウンユースで快適な履き心地を実現している。

New Balance創業115年の歴史で最も履かれた574シリーズのひとつ「ML574」

574が世界で最も履かれているNew Balanceであり、スニーカースタイルを好む人たちがリピーターとなるのも574が優れたスニーカーであると裏付けている。New Balanceの主力モデルとなった574は、かつての576のようにアップデートとバリエーションの追加を繰り返している。例えば「ML574」と呼ばれるモデルは80年代半ば生まれのデザインはそのままに、さまざまなディテールやラストを再検証してフィット性やクッション性、そしてグリップ性をアップグレードしてきた。さらに2017年に登場した「574S」ではスニーカーシーンのトレンドを反映して、フィット感を高めるブーティ構造とパフォーマンスシューズにも搭載されるクッション性や安定性に優れたミッドソールFRESH FOAMを採用。伝統を継承しつつ、新たな魅力を創出したのである。

トレンドセッターに向けて開発された「57/40」

この574は2021年にも新たなバリエーションが誕生。InstagramやYouTubeでよく見かける「57/40」である。「フィフティセブン/フォーティ」と発音する新たなスニーカーは、「327」や「237」のサイドパネルを飾り反響を呼んだBig N-logoをインプットし、90年代に多く見られたウェービーなアイスティやマッドガードが演出するボリューム感も今どきの仕上がりだ。

“574が現代のトレンドセッターに向けて開発されていたら”をコンセプトに登場した「57/40」

さらに574を継承するプロダクトでありながら細身でスタイリッシュな印象を醸し出すSL-1ラストを採用しているのも現代的なニーズに寄り添うセレクト。

実際に57/40が発売された直後から若い世代のスニーカー系YouTuberやファッショニスタが57/40を取り上げている。そのレビューの多くは574の歴史やテクノロジーにフォーカスしたものではなく、シンプルに「カッコいいから」という論調が目立っている。彼らはヘリデージ性よりも“いま履くべき新しいスニーカー”として評価しているのだ。そして57/40はトレンドだけを追ったプロダクトではない。「Classic 574」をベースにしたクッショニングやアウトソールパターンが生み出すグリップは、New Balanceに履き心地の良さを求めるユーザーも満足させてくれる。

「574」や「576」のディテールを継承し、現代のトレンドにアップデート

そうしたブランドのファンに対する真摯な姿勢は、時代のトレンドセッターだけでなく、古くからのNew Balanceファンをも動かしている。New Balanceファンの一部には、Made in U.S.A.やMade in U.K.を選ぶ傾向にある。それは「見た目が似ているのであれば、574よりも576を選ぶのが当然だ」という表現に近いものだ。ただ、そうしたNew Balanceを愛する人々も57/40に新鮮な魅力を感じ、誰からすすめられるまでもなく手にしている。これはスニーカー業界の常識から見ると画期的な出来事であり、数十年後に出版されたスニーカー雑誌で「57/40がNew Balanceの歴史を変えた」と掲載されても不思議ではないエポックメイキングなアイテムといえるだろう。

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