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Shoes × Fashion

ニューウェーブ・ファッションコレクションも店舗もナシ。それでも成長しつづける「foufou」の魅力とは

Text Shota Kato(OVER THE MOUNTAIN)
Edit Momoko Naito

「健康的な消費のために」をコンセプトに掲げる「foufou(フーフー)」。デザイナーのマール・コウサカさんがデザインする洋服は、適度にお洒落で使い勝手がよく、価格帯もちょうどいい。SNSを駆使しながらオンラインで直接販売するスタイルを貫き、関係者向けの展示会やコレクション発表を一切行わない。その独自なスタイルに見る、ファッションブランドの新しいカタチとは。

― 「foufou」はクリーンでシンプルなブランドイメージですが、ご自身のものづくりと“ニューウェーブ”という言葉の関係についてどう思いますか?

マール・コウサカ(以下: コウサカ): 僕はブランドを立ち上げた最初、ハンドメイドの洋服をつくっていたんですね。縫製もパターンも美しくない自分が目指したのは、何か光るものがある洋服。自分がつくる洋服を買ってもらえる視点を突き詰めながら、ファストファッションでは満足できなかったり、ワンルックで十数万円の洋服も買えない、という人たちに向けて、“ニューウェーブのファストファッション”であることを伝えてきました。自分で縫っている分、価格は抑えられるので文脈的に当てはまりますし、既存のものに対して新しい波として届けたいと思っていて。そうした活動をしないと、ピラミッドが出来上がっているファッション業界では目立つことができないし、そもそもブランドをやる意味がないからです。

― Instagram、Twitter、LINE、noteといったSNSを駆使していますが、コミュニケーションを重視しているのはなぜですか。

コウサカ: 既存の販売経路以外の選択肢から発信してビジネスの仕組みを作ることも僕らの世代がやるべきことだと思っています。次のムーブメントとは言わずとも、そこからかっこいいと思わせていかなければ、新しい時代の空気は生まれない。未だにブランドを始めることに対しての選択肢はレガシーな物しかない。先輩と同じことをやっても、僕らはその人たちを超えられないし、違った面白さをつくることもできない。そもそもファッションとは大きな流れとアウトローであることに価値がある。僕は文化服装学院のU部(夜間)出身ですが、U部服装科の卒業生で活躍している方はファッションの既存のルールにないスタイルを盛り込んで発信している人たちが多いんですね。僕の場合はいわゆる展示会やコレクションをあえてやらず今のスタイルにたどり着きました。ちゃんと自分たちのお客さんを見ることができればスタイルなんてなんでもいいんです。

スタンドカラーで品のある、オリジナル素材の花柄ワンピース

― ブランドのスタイルとして、セレクトショップなどへの卸販売を行っていませんよね。

コウサカ: 百貨店やセレクトショップが嫌いなわけではないんです。卸販売をやらずにブランドを進めていくとどうなるのか、ということに個人的に興味があります。おそらくそういった形でブランドを続けている人はいなくて、なら僕が続けることで道を作りたいです。これは周りのブランドは関係なく、自分の孤独な挑戦です。

― 展示会の代わりに試着会を開催していますよね。

コウサカ: 試着会は2ヶ月に一度のペースでやっています(2020年は9月まで中止)。全国に足を運んで、お客さん向けに開催しています。それはそもそもファッションは誰のものなのかを遡ると、お客さんのためのものだからです。インターネットを通じてお客さんに直接届けられるのであれば、試着会という形が僕らにとっては正しいので時間もお金も投資しています。

ひと針ひと針ステッチやディテールにこだわった「THE DRESS」シリーズ

― コウサカさんが思うfoufouの定番アイテムは何ですか?

コウサカ: 多くのお客さんがまず思い浮かべるのは「THE DRESS」というシリーズのワンピースでしょうか。すごく重くて使いづらいけど、それがお客さんに喜んでもらえています。インターネットで注文すると、手元にワンピースが届きますよね。重いワンピースは当然重量があるので、その重さが高揚感につながると思うんです。僕はインスタライブで商品のデメリットも伝えるんですけど、実際に試着してみると案外気にならなかったりするんですよ。

― でも、一般的に重い服は商品の企画会議を通りづらかったりしますよね。

コウサカ: たしかにそうですね。foufouには用尺5メートルもの生地を使ったスカートがありますが、たとえば、一般的なブランドはお客さんから「重い、歩きづらい、シワになる」といった声を受けて、生地を変えたり用尺を減らしたりします。でも、それが正しいものづくりなの? と僕は思うんです。お客さんの意識を変えていけば、重くてシワになりやすい服も存在していけるはずだって。

― デメリットが気にならない特徴をつくるということですか?

コウサカ: おっしゃるとおりです。夏には綿素材の真っ赤なワンピースをつくるんですね。綿はシワや汗ジミにもなりやすい。用尺もあるので使いづらいけど、夏に真っ赤なワンピースを着るという楽しい気持ちを体験してほしいです。つまり、合理的なことが人生のすべてじゃないと伝えたいんですよ。今の時代の洋服は合理性と効率性を訴えるものが多くて、もっとハプニングを受け入れる余裕があってもいいと僕は思います。

― インスタライブでは、出来立ての商品サンプルもコウサカさんが自ら紹介していますよね。

コウサカ: 僕はサンプルを見た瞬間に一番テンションが上がるので、今すぐに見せたいとシンプルに思ってしまうんです。ライブ配信はテレビショッピングと違って親近感があることが大事。かっこつけたり恥ずかしがったりすると、変な空気になってしまうんですよ。憧れのラグジュアリーブランドがそういった見せ方をすると格が落ちてしまうけど、親近感を大事にしたい僕らはライブ配信との相性が良かったんです。

2019年秋にはメンズのセットアップを発売

― 2019年からメンズアイテムとして、スラックスとベージュのセットアップを発表していますね。

コウサカ: 試着会も絡めて言えば、裏の定番アイテムは男女問わず使えるスラックスなんです。一度履いてみるとその魅力が伝わるアイテムとしてつくり続けています。僕は2020年で30歳になりますが、おじさんが着るような洋服が好きなんですね。お客さんからメンズアイテムも欲しいという声をたくさんいただいてから少しずつ増やしていますが、トラッドなスタイルはもっと年齢を重ねてから本格的にやったほうがいいものをつくれると思う部分もあって。でも、丁度いい価格帯のトラッドなブランドは少ないと感じたので、僕がおじさんになって困ったときのことも考えて始めました(笑)。

― 素材や色数、その他ディテールのアップデートなどをして販売することはしないのですか?

コウサカ: まったくそのままの形で新作のように打ち出しています。今のところ値段も質もデザインも完成されていると思うので、いじる場所が見当たらないんですね。まったく同じものを売り続けることは難しいですが、一度セールにかけるという構造が問題なんだと思います。その点、僕らは一度もセールをやっていないので、ずっと販売できるんです。そのまま再販することの良さとは、以前買ってくださったお客さんが喜んでくれるということ。自分が買った洋服が2年後も同じ形で売っていると嬉しくなりませんか? 使い古してもまた買えるという安心感と自分が買ったものが古くならないという納得感があります。

トップスを選ばず履けるスラックスは、foufouの裏定番アイテムといえる

― 洋服の種類としては決して多くはありませんが、ラインナップを広げないのはなぜですか。

コウサカ: 商品には生まれるべき理由があって。月に3型くらいの新作を発表していますが、その前段階にはつくりたいものが山ほどあるんですね。でも、やるべき意義が感じられないものはやらないほうがよくて。他のブランドのモノがいいと思えば、「ブルックスのブレザーを買ってください。それに合うスラックスが僕らにはあります」と正直に答えたい。それが正しいコミュニケーションなんです。

― お話しを伺っていると、foufouは隙間を縫って居場所を見つけてきたブランドなんですね。そんなfoufouだからこそ打ち出せる実店舗の形もあると思うんです。

コウサカ: お店をつくることにはすごく前向きです。新型コロナウイルスの影響を受けて、ファッション業界のオンライン化が加速しています。常にアウトローでありたい僕らは既存とは異なるスタイルを貫いてきましたが、今後多くのストアや有名ブランドがオンライン化を進めていくと、僕らがいる場所が主戦場になってしまうんですね。では、僕らは何をすべきかというと、次のインターネットのような場所を探さなければいけません。それがインターネットをつなぐリアルな場所だと考えています。お店をつくることで、これまで以上にオシャレを知らなかった人が買うようになってくれたらすごく嬉しい。今よりもその立場になれるのであれば、僕らはファッション業界全体に対してもポジティブな影響を与えられるんじゃないかなと思っています。

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