プロダクトデザイナーの手嶋隆史さんが立ち上げたSOUBI BY TAKASHI TESHIMA。「精神的・物理的不安や脅威から防護(protect)し、装い備えること」をコンセプトに掲げ、防護服から着想を得た独創的なファッションウェアを展開している。なぜ防護服をモチーフに? プロダクトデザインの視点から緻密に設計されたクリエーションと、それに相反するファッションの感覚的なムードが融合した新進気鋭のブランドの核心に迫る。

― なぜ防護服をモチーフにしたコレクションを発表したんですか?

手嶋: SOUBIのブランドコンセプトが「精神的・物理的不安や脅威から防護(protect)し、装い備えること」=装備(SOUBI)というものなのですが、物理的な部分の「装備」の説明をすると、まずPPE(個人用防護具)というものがあるんですね。具体的には、いわゆる防護服のほかにマスク、グローブ、フェイスシールドなどがあって、それらのプロダクトがベースになっています。

Shell jacket + Tyvek parts Set/¥58,000

― 防護服のことをPPEと総称するんですね。

手嶋: 正確には、何か特殊な現場で身を守るものの総称をPPEと言うんです。放射能から防護するものもあれば、森林伐採用のPPEもあるんですよ。ヘッドフォンみたいなもので耳を塞いだり、チェーンソーで足を切らないためのディテールが施されていたり。状況によって装備するというコンセプトで、いろいろな防護服から着想を得たコレクションを展開していきたいと考えています。

たとえば、今の世の中は豪雨で街が水浸しになることが珍しくなくなり、長靴がより身近なものになって日常に入りこんできた。物理的、プロダクト的なアプローチとしては、そんな視点をファッションに落とし込んでいます。

上/Shell jacket + Protective parts Set
下/Cargo pants + Leg cover Set

― 精神的な部分の「装備」については?

手嶋: インターネットやSNS、テクノロジーの発達によって世の中が便利になるほど、不安や孤独感が増しているような気がしていて。そうした精神的な面をプロテクトする要素もニュアンスとして込めています。そのあたりのメッセージは、今後、さらに分かりやすく盛り込んでいきたいと思っています。

― 素材でいえば、最近、工業用資材のタイベックをバッグなどに用いているブランドも少なくありませんが、ウェアの生地として採用しているブランドは見たことがありませんでした。

手嶋: それこそ防護服はタイベックでつくられているんですよ。SOUBIの黄色いジャケットは、タイベックより少しグレードの高いラミネートされた不織布でできていて、実際の防護服を解体してリメイクしているんです。タイベックはアウトドアの分野で使われていたり、強度や防水性があるので建物工事の外壁に使われていたりもします。ちなみに防護服は菌から守ることも目的にしているので、一度着たら基本的には捨ててしまうんです。でも、SOUBIのシェルジャケットでは、あえてファスナーで着脱できるようにして、さまざまな着こなしを楽しめるように設計しています。

シェルジャケットの上にファスナーで着脱可能なタイベックパーツをセットにしたブルゾン。パーツを取り換えることで、さまざまな着こなしを楽しむことができる。素材は建築資材や化学防護服などで使用されているタイベック(高密度ポリエチレン不織布)を使用
Shell jacket + Black tyvek parts Set/¥65,000

― SOUBI BY TAKASHI TESHIMAとして2019-2020コレクションを発表していますが、いわゆるSS、AWシーズンに合わせないのはなぜですか?

手嶋: 僕自身が、TAKASHI TESHIMA DESIGNという屋号のデザイン事務所としても活動していまして。プロダクトデザインとファッションブランドの2つをやっているという関係もあって、バランスを取りながら展開していければと思っています。ブランドコンセプトとしても、シーズンにとらわれずにアイテムを発表していくというスタイルを継続していきたいと考えています。

― プロダクトデザイナーとしての視点、クリエーションをどのような形でファッションに盛り込んでいるんでしょうか。

手嶋: 今はプロダクトデザイン的なアプローチに寄っているという表現が正しいですね。プロダクトデザインは機能をもって課題を解決するなど、ちょっと理屈的、論理的な側面が多いのですが、もう少しファッション的でエモーショナルな部分にも今後はトライしていきたいと思っています。

― プロダクトデザイナーである手嶋さんが、なぜファッションブランドを始めたんですか?

手嶋: 単純にファッションが好きで、ブランドをやりたかったんです。学生のころにラフ・シモンズにすごく衝撃を受けて。彼の経歴を調べたら、工業デザイン、家具デザインの出身だということを知り、パリコレのデザイナーの中でも異質に見えたのは、そのキャリアの影響なんじゃないかと思い。そこから影響を受けて、自分で勉強して始めてみたという感じです。基本的には独学ですが、ファッションデザイナーの山縣良和さんが運営している「coconogacco」(ここのがっこう)というプライベートスクールに入学して、ファッションの考え方やクリエーション、オリジナリティなどを学びました。

― 2019-2020シーズンでは、どんな用途の防護服から着想を得ているんでしょうか。

手嶋: このシーズンのテーマは「害虫駆除」(Pesticide)なんです。農薬散布用のウェアやマスク、農作業で膝が汚れないためのレッグカバーを施したパンツ、防虫用のメッシュウェアなど、そういったものを取り入れたラインナップになっています。

もうひとつ「Primitive Journey」というテーマから、自然素材のプロダクトもつくっているんです。たとえば、ストールは作家さんに草木染めをした糸から織っていただいた一点モノに近いプロダクトです。

Wide work pants

上/Natural dyed scarf, Harness
下/Wide work pants + Gaiter Set

― 高機能素材と天然素材、両極の要素を取り入れているんですね

手嶋: 機能的と感情的、論理的と混沌としたこと。そういった対極にある2つの要素の間にある何かを考えることが好きなので、それを形にすることが自分のやりたいことなんです。

― シェルジャケット背面のカラビナタグや、ハーネスといった付属品には、プロダクトデザイナーならではのディテール表現が凝縮されていると感じました。

手嶋: まさにそうですね。ハーネスはバックル部分、カラビナは全体を3Dプリンターで出力してオリジナルでつくっています。バックルをカチャッと合わせる感じが好きな人は多いと思うんです。変わった素材感や付属品のディテール、ガジェットのような感覚を楽しんでもらえたらと。

― 防護服、プロダクトデザインなどのキーワードとコレクションフォトの世界観が相まって、SF映画のようなビジュアルに仕上がっているように感じます。

手嶋: たしかにSFからの影響はありますし、そういう部分もクリエーションに入っているのかもしれません。もともとアウトドアウェアは登山用、ミリタリーウェアは戦争用につくられたものですよね。特殊な用途のものが今では日常でも着られるようになった。PPEは馴染みがないものなので、何とも形容し難い雰囲気に映るかもしれませんが、アウトドアウェアやミリタリーウェアのように日常着として浸透していくかもしれないなという想いがあります。

― ところで、世の中的にはウイルスが蔓延して、なんともSOUBIの世界観のような世界になってしまいました。

手嶋: たまたまの出来事なので、僕もびっくりしていて(苦笑)。ある程度は災害的、地球環境的なこと、インターネットで世界中がつながっている世の中などを想像して作っていましたが、まさかこんな世の中になるとは思いもしませんでした。ただSOUBIはウイルスに特化した防護服をつくるブランドではないので、今後のコレクションではさまざまなPPEから着想を得たブランドであることを伝えていきたいですね。

Shop Information

SOUBI BY TAKASHI TESHIMA

https://soubi-by.takashi-teshima.com/

TAKASHI TESHIMA DESIGNA

https://www.takashi-teshima.com/

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