DIGAWEL出身の柴崎博和が手がけるSHEBA。2019年秋冬シーズンのデビューから「Ordinary Pleasure」をブランドコンセプトに掲げ、人それぞれに解釈できる「日常の喜び、心地よさ」を表現している。2021年春夏シーズンはコレクションタイトルを「PROLETARIAT(プロレタリアート、ブルジョアジーの対語で、賃金労働者階級を表す語)」に刷新し、物語性のあるフィクションを展開。建築やインダストリアルデザインの文脈と洒落のきいたユーモアが同居する新鋭ブランドの哲学を紐解く。

― 柴崎さんはDIGAWELでプレスを務めた後にSHEBAを立ち上げていますが、まずはDIGAWEL時代のことを聞かせてください。

柴崎: 専門学校のファッションデザイン科を卒業して就職活動をしていたんですけど、とくに入りたいと思える会社がなかったんですね。自分が遊びに行っていたお店を思い返してみたら、DIGAWELが印象に残っていて。それで履歴書を送ったら、たまたまショップのアルバイトの方が抜けるタイミングで、そのまま入れ替わる形でショップスタッフとして採用されました。

もともと入社するときに、僕がデザイナー志望であることは伝えていました。でも、デザイナー職は募集していませんでした。ですが、ショップスタッフといっても制作に関わる仕事でもあるということで、お店に立つことから始めました。

― DIGAWEL在籍中はSHEBAの原型となる服は作っていたんですか?

柴崎: 遊び感覚で作っていたけど販売目的ではなくて。その流れもあって、自分でブランドをやりたい気持ちが湧いてきたというか。ちょうどDIGAWELが東京コレクションに参加した時期ですね。そのときに浩平さん(DIGAWELデザイナー 西村浩平氏)に相談して独立させてもらいました。

― DIGAWELのプロダクトはシンプルなものからトリッキーなものまで幅広い。ショップにはインスピレーションソースになっていそうなレコードやアートブックが置いてあって、そういったファッション以外の要素も含めてSHEBAに生かされていると感じました。

柴崎: そうですね。そういった要素はすべてDIGAWELでの経験で得たものかもしれません。店舗には拘った家具やプロダクトが空間の中にとても自然にディスプレイされていたり、一般的なファッションブランドともアプローチが違うように感じました。僕も自分のブランドを通して、今あるファッションの世界に収まる活動はしたくないんです。

Hat/¥11,000
Shirt/¥26,400
Shorts/¥27,500

Jacket/¥69,300
T-Shirt/¥17,600

― おもしろいと思うものがファッションの外側にあるということですか?

柴崎: まさに。今、2021FWシーズンに向けてビジュアル制作に取りかかっているんですが、チームのスタイリストやフォトグラファーはファッションつながりだけど、このメンバーに加えて一緒に仕事をしてみたいと考えている人は建築寄りだったり、美術館の図録をデザインしている人だったりするんです。DIGAWELではグラフィックのアートディレクションを田中義久さんが手がけていたりしたので、自然とファッションとアートの境界線は薄れていきました。ファッションの外側に興味がある、というか興味がある物がファッションの外とされていることが多かった。それをファッションと結びつけようとする感覚もDIGAWELの影響だと思います。

Anorak/¥52,800
Pants/¥36,300
Gown/¥56,100

― SHEBAというブランドネームは何から着想を得ているんですか?

柴崎: 僕の名前の響きにも近くて覚えてもらいやすいというのもありますけど(笑)、パティ・スミスが実家で飼っていたシーバという犬の名前にも由来していて。ちょっとダジャレっぽい名前にしたかったんです。

※ パティ・スミス:1970年代からミュージシャン、詩人として活動している「ニューヨークパンクの女王」。

― SHEBAのウェブサイトにはEOFDという名前が付いていますが、どんな関係性なんですか?

柴崎: 「Environment Of Fabrication and Distribution」という、ブランドを立ち上げる前に自分のなかで哲学的に考えた言葉の頭文字なんですよ。現代のファッションの循環のあり様があまり気持ちよくないというか。無理して服を作っていると感じていたんですね。

僕にとってのファッションは、ブランド側の「自分たちがほしいと思う服」という恣意性やエゴがおもしろさなのに、「誰がほしい服なのか」というマーケティング的な視点から作られている服が溢れています。ビジネスなので仕方のないことではあるのですが。

― 今は落ち着いたトーンの服が多いですよね。

柴崎: とくにメンズは上質でプレーンな服が増えています。でも、さすがに(ファッション業界の)仕組みを変えるのは骨が折れるので、自分の屋号として掲げることで初心を忘れないという意味を込めています。

最終的にはEOFDという大きな生き物としてブランドを回していきたいというか。形が変わってもSHEBAであるというアイデンティティを固めていきたいんです。僕はニッチなことをやろうという意識は無くて、根はミーハーなので。ウェブサイトはレム・コールハースが主宰している建築設計事務所OMAのデザインを参考にしているんですね。OMAは多彩なクリエイターが集まっていて、それに近い世界観を目指したいと思っています。

※ レム・コールハース:オランダの建築家、思想家、脚本家。1975年にOMA(Office for Metropolitan Architecture)を設立。2000年にプリツカー賞、2003年に世界文化賞を受賞している。

Hat/¥11,000
Bandana/¥4,620
Hoodie/¥36,300
Pants/¥36,300

― SHEBAとして掲げているコンセプトは「Ordinary Pleasure」(=日常的な喜び、心地よさ)ですが、これはトロ・イ・モアの曲名なんですね

柴崎: 言葉が持つ広さがいいなと。僕はSHEBAを通じてパラレルワールドを作りたいと考えていて。コレクションでは、僕らがいま生きている世界とは別の時空の世界を表現することを意識しています。その主体になるような間口の広い言葉を探していて、トロ・イ・モアの「Ordinary Pleasure」を聴いたときに腑に落ちたというか。何かひとつに特定できないニュアンスを持った言葉の意味、響き、字面も納得できるものでした。

※ トロ・イ・モア:2010年にデビューしたカリフォルニアを拠点に活躍する、チャズ・バンディックによる音楽プロジェクト。

― 2019FWのブランド立ち上げから3シーズンのテーマは「Ordinary Pleasure」でしたが、2021SSは新たに「PROLETARIAT」を掲げています。

柴崎: 3シーズンを終えて、そこからコレクションに物語を持たせようということになって。2021SSは昔の邦画のようなコンセプトで、40年後の未来に蔓延した未知のウイルスによって、日本がディストピア化した設定にしました。社会の構造も変わって、世のなかは大企業が牛耳るようになった。その世界の末端労働者のユニフォームを形にしたのがこのコレクションです。コレクション写真は縦構図が一般的ですけど、2021SSはすべて横構図で統一していて。そういうところからも既存のルールから逸脱していきたいと考えています。

L/S Shirt/¥19,800
S/S Shirt/¥17,600
Polo shirt/¥3,800

― これからSHEBAが哲学的なコレクションを展開していくなかでは、映画、音楽、建築、アートなどのファッションから派生するカルチャーも、ブランドを語る上でより重要な要素になっていくと思うんです。

柴崎: 当面はパラレルワールドについて考えることになりますね。プロダクトとしてはユニークな構造の服に積極的に挑戦したいです。最終的には服以外もアウトプットしてブランドの広がりを表現していきたいですね。例えば、使わなくてもいいけどオブジェとしても飾れる服というか。ある種の不要の極みに価値を見出して買ってもらえたらなと。

僕が影響を受けているエットレ・ソットサスという建築家・インダストリアルデザイナーがいて、彼は「デザインとは、来るべき未来を作るべきものだ」と提言しているんです。デザイナーとは未来の社会を想像して、そこで使われるものを創造していく人だと。

Hat/¥11,000
Bandana/¥4,620
L/S Shirt/¥19,800
Pants/¥36,300
Shorts/¥23,100

― デザイナーあるべき姿のひとつですね。

柴崎: 今は多くのブランドがサステナビリティを語っていて、これ以上、地球環境を壊せないところまで来ているじゃないですか。僕がソットサスのマインドでサステナビリティを伝えていくならば、繊維業と結びつかない要素で服を作れたりするとSHEBAらしいのかもしれないですね。それを明確に言語化できるようなブランドにしていきたいです。

服は嗜好品であって贅沢品。それなりにお金を払って着用することに高揚感を覚える感覚って、人間のエゴだと思うんですよ。そこに目に見えない何かを感じられる瞬間を生み出せたら、SHEBAはその人が生きていく上で有意義な時間をもたらす存在になっていくと思うんです。

Shop Information

SHEBA

2019年にデビューしたメンズブランド。「Ordinary Pleasure」をコンセプトに素材やシルエットにこだわったアイテムを展開している。

http://e-o-f-d.com/

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