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Shoes × Fashion

ニューウェーブ・ファッション良質な“ダラダラ”の追求。パジャマブランド、NOWHAWがプロダクトに込めたユーモアと合理性

Text Shota Kato(OVER THE MOUNTAIN)
Edit Kunihiro Miki

十河幸太郎さんと妻のチューソンさんが手がけるパジャマブランド、NOWHAW。家で過ごすパジャマでありながら、外でも着られる服として、年々その存在が注目されている。近年では、「スタイリスト私物」「nanamica」といったブランドやKen Kagami、Masanao Hirayamaといったアーティスト、さらにはBOOK AND BED TOKYOなどのホテルともコラボレーション。なぜパジャマをつくり続けるのか。リアルでユーモアのきいたものづくりのロジックに迫る。

― なぜNOWHAWはパジャマブランドとして始めることになったのですか?

十河: よく聞かれますけど、僕は明確な回答を持ち得ていなくて。素直に話すと、自分のほうがすごいものがつくれるという根拠のない自信だけは持っていて、どのジャンル、業種においてもこういう若手っていると思うんですけど、僕も同じくその初期衝動と勢いだけで始めました。今思えば、それがパジャマだったってことがラッキーでしたね。パジャマって大きく分けると、スーパーの2階とかに安価な上下セットが並べられていたり、百貨店で売られている1、2万円代のものがあるんです。平たく言えば、自分が欲しいと思うものがなかったし、モノのクオリティとして「これでお金を取るの?」と疑ってしまうものばかりでした。

― ファッションとしての服とパジャマの違いをどのように捉えていますか?

十河: 僕も服好きの一人だけど、パジャマにおいては同じ袖を通して着るにしても用途が違うんですよ。外に向かっていくことと内に向かっていくことの違いですね。パジャマで過ごしているのはめちゃくちゃ油断している状態なんです。ご近所スタイルなのに、相手からすれば「あら、お洒落ね」と思われるようなパジャマをつくりたい。それは初期衝動としてありましたし、パジャマだからほとんどのアイテムを上下セットで販売しているのも洋服との違いですね。上下バラ売りだと思ってる人には「嫌でもパンツが付いてくるよ! ラッキー!」なんて言ったりしますけど(笑)。

“moon” animal

“jambo” camel check

― パジャマをつくる上で、「くつろぐ」という要素は重要ですか?

十河: それはど真ん中ですね。NOWHAWは2020年で9年目になりますけど、くつろげるという意識は年々浮き彫りになっている感覚があります。僕ら夫婦(妻のチューソンさんもNOWHAWを手掛けている)のパジャマを外でも着るって人もいますけど、外着に負けないとは絶対に言えないです。家に帰ってきてから着替えて、布団に入って朝起きるまでの時間を目がけているんですね。たとえば、パジャマのピスネームが光ったり、襟裏に小さなポケットが隠されているのは、大人のベッドタイムをより良いものにするため。電気を点けてパジャマを探すとせっかくのムードが壊れてしまいますからね。実体験に基づいたドキュメンタリーなんですよ(笑)。

蓄光ピスネーム

― ゆとりのあるシルエットの服が人気になったり、コロナの影響で家で過ごす時間が増えたりして、パジャマの価値を見直す機会になっていると思うんです。

十河: 眠るということやパジャマの良さに気付いてくれる人もいるかもしれない。そうだとすれば、僕らからすればラッキーですね。なんだったら「パジャマを着たらラッキーになるらしい」みたいなイヤらしい広まり方をしてくれたら、ますますラッキーです(笑)。女子高生にもおじいちゃんにも着てほしいですもん。誰でも気持ちよくくつろいでほしくて作ってるから。そして着てくつろいでくれた人の記憶細胞の断片に残っていてほしい。これは大好きなTHA BLUE HERBがフジロックでそうラップしてたのをかっこいいから、いま急にサンプリングしました。すごく大げさに言うと、僕らのパジャマってヒップホップに集約されている感じはあるかもしれませんね。

― どういうことですか?

十河: ヒップホップの影響をとても受けています。基本的な考えとしては、自分を自慢するセルフボースティングの発想をトレースしていると思うんですよ。特にNOWHAWを始めたころは、ふんぞり返るくらい自信満々でしたし、今も自分の表現が一番だと思っている人のラップや話を聞くのが大好きなんです。たとえ周りからは滑稽に見えていたとしてもそれでいいと思っています。Stay Foolishです。あとリアルにやる。

“futon” dark brown check

“day” denim

―そういう意味では、NOWHAWは自分たちが面白いと思えるパジャマしかつくっていませんよね。ゲーム好き、特にプレイステーション好きが高じて、そのためのパジャマを形にしていますし。

十河: そう言ってもらえると嬉しいですね。プレステへのリスペクトからつくったPLAYというパジャマは、コントローラーのボタンの4色をパジャマのボタンに配置したり、ゲームするときの姿勢のために肘当てをつくったりして。しかも、その大きさがソフトのパッケージのサイズにぴったり合うという。もはや、これはプレイステーションを愛する者としての愛情表現ですね。身近にある好きなものだけで生活は成り立つじゃないですか。

PLAY

― 「スタイリスト私物」や「nanamica」といったブランド、Ken KagamiさんやMasanao Hirayamaさんといったアーティストとのコラボレーションも、パジャマだからこそできることだと思います。

十河: それこそ本当にラッキーなことです。パジャマを活動に選んで良かったと思える大きな醍醐味です。そして諸先輩方とやっていくうちに、オレが一番イケてるっていう気持ちがすごく謙虚になっていくんですよ。もっと良くしなきゃと思うようになって、その中心に寛ぐという意識がある。それが無くなると、どこに向かって掘り下げればいいのかわからなくなってしまうんですよね。僕のさじ加減で諸先輩方から学んだことを組み合わせているから、それは絶対に良いパジャマになると思う。そういう意味では自信を持てるようになりました。僕らのパジャマはもっと良くなるって。でも、もしまた自信満々にふんぞり返る日が来るとしたら、それは一体いつなんでしょう(笑)。

― 良いパジャマという自信があっても、上質な生地やこだわった製法についての情報を全面に出さないのもNOWHAWらしいですね。

十河: 出さないぞって意識してはいないですけど、だとしたらそれは電気グルーヴの影響ですかね。なるべくふざけていたいし、そういうのがマナーだと思っています(笑)。「外にも着ていける」とかも自分で絶対言いたくないし。好きに使ってくださいという感じです。高級ラインのHOMESICKと、インナーとルームウエアのラインTwilightもつくっているから、気持ちいい素材やラクなシルエットを追求するのはパジャマブランドとして自然のことなんです。

Twilight

HOMESICK

― パジャマはみんなの共通言語なのに、着ている人と着ていない人で分かれますよね。改めて思うパジャマの良さって何でしょうか?

十河: 仕事ができる人はオンオフをしっかり切り替えたほうが効率良いとわかっているんですよね。逆に、仕事とプライベートがどっちつかずの延長で過ごしているとメリハリがつかない。僕はメリハリをつけたほうが良いパフォーマンスを発揮できると思っていて。寝るときは寝る、やるときはやる。言うほど僕自身はできていませんけど、パジャマはそんな切り替えのためにあるんですよね。

― たしかに。やることをやって、家でくつろぐのが一番気持ちいいですね。

十河: 僕らはこの活動を生業にできたとき、仕事としてダラダラすることを許されたんです。当初それがどういうことなのか分からなかった。パジャマをつくることができているという状況だからこそ、みんなを代表してダラダラして、人よりも気を抜いて過ごしていればいいのか。そこで見つけてきたものを掴んで落とし込んで、みんなを代表してパジャマをつくってきたぜと提示すればいいのか。それはどちらも大きな勘違いであって、健康に向かう「良質なダラダラ」を追求していくことを許されたという感覚なんですよね。

― それも「難しいことを簡単に見せる」こととリンクしますね。

十河: ただ横になってるだけでは飯は食えませんものね(笑)。そういう意味では、今までは「ご夫婦の部屋を見せて」と言われても断ってきたけど、見せても恥ずかしくない暮らしに向かって、良質なダラダラの見本となり得る生活を目指したいなと。そうすることで、もっとパジャマに説得力が生まれると思うんです。今は「ラッキー」しか気持ちを表現できる言葉が見つからないけど、ちゃんと答え合わせをしていきたいですね。

Shop Information

NOWHAW

パジャマによる「新しく思いがけない驚きのある休日と世界」を過ごす為のノウハウ。 “インテリア(空間)”、“ファッション(スタイル)”、“アート(表現)”の要素を「寝心地最優先」という信念の元、“パジャマ”に落とし込む取り組み。

https://www.nowhaw.com/

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