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アイコニックアイテム現代的なライフスタイルに寄り添うヘリテージモデル ―New Balance 996

Text Hiroshi Sato
Illustration Atsushi Ave
Edit Momoko Naito

ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは、コアなスニーカーファンを納得させるMade in U.S.A.モデルから、キッズモデルまで幅広くラインナップするNew Balanceの「996」シリーズ。1988年に誕生したモデルが、これ程までに幅広い世代に愛され続けている例は他に類を見ない。スニーカーヘッズだけでなく、ファッションの一部としてスニーカーを選ぶ女性からの評価も高い、996の人気の秘密を紐解いていこう。

1988年に誕生したNew Balanceを象徴するモデル

多くのNew Balanceに冠される3桁のモデル名において、9から始まる900番台のモデルはランニングシューズとして開発されたプロダクトだ。そして900番台の中で最も知名度が高く、オリジナルが発売された1988年当時から愛され続けている定番プロダクトが「996」である。「990」の後継モデルとして1986年にデビューを果たした「995」をアップデートしたプロダクトで、995アッパーのデザインを受け継ぎつつ、ヒール周りのパーツ形状を変更してホールド性を向上させている。同じくNew Balanceを代表する「576」ともアッパーデザインが似ているが、576がやや幅広な“SL-2”ラストを採用するのに対し996は比較的細身な“SL-1”ラストを採用。実際に着用して比較すると、かなり異なる印象を受けるだろう。

1988年当時のポスターからもENCAPをはじめとしたテクノロジー、快適性がわかる

996が根強い人気を誇る理由のひとつがミッドソールに搭載された“ENCAP”による快適な履き心地だ。上級モデルの「M1300」も採用するENCAPは衝撃吸収と安定性に優れるクッショニングテクノロジーであり、996のヒールサイドに入る“ENCAP”のロゴは、このプロダクトが上質な履き心地を約束する証なのだ。

New Balanceのプライドを履くMade in U.S.A.

快適な履き心地とともに996の人気を更に盛り上げているのが「M996」と呼ばれるMade in U.S.A.モデルの存在だ。M996を扱うショップは限られているものの、比較的入手しやすい本国生産のスニーカーとして現代のスニーカーシーンでは貴重な存在である。New Balance以外にもMade in GERMANYのadidas OriginalsやMade in ITALYのdiadoraなどブランドの発祥地で生産したスニーカーを展開するブランドは存在するが、アジアで生産されるスニーカーに比べると製造コストが高くなるため、期間限定で販売されるケースが殆どだ。もちろん996にもアジアで生産される「CM996」などがあり、アジアで製造されたスニーカーがパフォーマンス面で劣っているというわけではないが、本国生産のスニーカーからは“ブランドのプライド”と言い換えることが可能なクラフトマンシップが感じ取れる。そうしたコアなプロフィールにファンが熱狂するのだ。

さらに1990年代には国内で正規販売されるM996に加え、海外でのみ展開されていたカラーを並行輸入するショップも珍しくなかった。中でも英国限定で展開していたと伝えられるブラックにゴールドのポイントカラーを組み合わせたM996は、ラグジュアリーな存在感と海外限定というキーワードで当時のスニーカーファンを誘惑したのだ。そうした1990年代の記憶も996人気を下支えしている。

現代的なライフスタイルに寄り添う996


日本限定で登場した江戸カラーは、日本人に肌なじみがいいアースカラーを採用している

現代の996人気を語るうえで外せないのが、世代や性別、そして多様なライフスタイルに対応するバリエーションモデルの存在だ。例えばアジアで生産されるCM996は優れたコストパフォーマンスだけでなく、豊富なカラーバリエーションを展開。最新バージョンのCM996ではMade in U.S.A.モデルのシルエットをディテールまで忠実に再現しており、1988年生まれのオリジナリティを気分やコーディネートに合わせて取り入れることが可能だ。さらにレディース専用ラインの「WL996」では、単純に女性を意識したサイズやカラーを展開するだけではなく、スリムな996のシルエットを更にシェイプアップしている。店頭でCM996とWL996の違いを意識して試着すると、より好みの1足を見つけられるハズだ。現代の996は日々のライフスタイルにスニーカーを取り入れる女性層への配慮も欠かさない。


キッズモデル「YV996」(上)とインファントモデル「IZ996」(下)

さらに996にはキッズモデルの「YV996」に加え、インファント(ベビー)モデル「IZ996」もラインナップ。体重の軽いキッズ向けモデルのためENCAPは搭載されていないが、そのルックスは大人用モデルと遜色のないヘリテージ感を醸し出している。特にYV996のシューレースを通したように見えるディテールはゴム紐で、スリッポン感覚で着脱が可能という優れもの。子どもにYV996やIZ996を履かせていると、スニーカーに詳しい友人からも“子どものためにちゃんとスニーカーを選んでいるな”という評価が獲得できるメリットも付け加えておこう。スニーカーの歴史に詳しいコア層からよちよち歩きの子どもまで実に幅広い層に寄り添う996は、現代的なライフスタイルとの距離が最も近い名作スニーカーといえるだろう。

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