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アイコニックアイテムハイエンドランニングシューズを現代的なトレンドモデルにアップデート ―adidas Originals ZXシリーズ

Text Hiroshi Sato
Illustration Atsushi Ave
Edit Momoko Naito

ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは、1980年代から90年代における最も偉大なランニングシューズのひとつであり、オリジナルの意匠を継承したアップデートモデルが現代のスニーカーファンを楽しませているadidasの「ZX」シリーズ。オリジナル発売当時は最先端テクノロジーを贅沢に取り入れたパフォーマンスと機能美が評価され、現代ではボリュームあふれるレトロ感がスニーカーとしての人気を高めているプロダクトだ。2020年でデザイン誕生から36年を迎えた今、ZXファミリーが辿った進化の歴史をあらためて振り返ってみよう。

1984年に誕生したランニングシューズの絶対的なアイコニックアイテム

「SUPERSTAR」や「STAN SMITH」など、adidasを象徴するコートシューズ系のアイテムに対し、ランニングシューズにおける代表格といえるのが「ZX」シリーズだろう。1984年に初代モデルの「ZX 500」が登場して以降、さまざまなバリエーションモデルが登場し、現代もadidas Originalsブランドから復刻モデルやアップデートモデルがラインナップしている。

1984年、発売当時のZX 500 (c) adidas Archive

ロサンゼルスオリンピックの開催にあわせて発売されたZX 500は、長距離用のトレイルランニングシューズであり、アッパーに上質なレザーやスエードを採用するとともに、トゥボックスには通気性を確保するナイロンメッシュを搭載。積層ミッドソールやヒールカウンターパーツが走行時の安定性を高め、未舗装路でも高いグリップを発揮するアウトソールを採用している。

当時におけるトレイルランニングシューズの手本と評しても過言ではない仕上がりだった。そのパフォーマンスは多くのランナーからの支持を集め、1986年にはZX 500に加え、ディテールや素材の異なる「ZX 250」や「ZX 600」、さらに「ZX 700」をラインナップ。1989年にはシリーズ初のトルションシステムを搭載した「ZX 8000」がリリースするなど、adidasのパフォーマンス系ランニングシューズのハイエンドに君臨したのである。

ZX 8000に搭載されたトルションシステムは、トルショングループ(溝)でつま先部分とかかと部分を分割し、足本来の動きを確保。トルションバーで前部と後部をつないで足のねじれや危険な動きを制御してくれる (c) adidas Archive

そのZXシリーズは1980年代からランナーだけでなく、デイユースのスニーカーとしても注目を集める存在になっていた。特にヨーロッパでの人気は熱狂的といえるもので、その火付け役となったのはサッカーイングランド代表のサポーターだと伝えられている。1980年代中期のイングランド代表といえば、ゲーリー・リネカーを思い出すサッカーファンも少なくないだろう。1986年のワールドカップ・メキシコ大会で6得点を挙げて得点王に輝いたリネカーが履いていたスパイクがadidasだった。当時のサッカー選手はトレーニング時にスパイクと同じブランドのランニングシューズを履くケースが珍しくなく、誰もが注目するスター選手集団がZXを履き、それに刺激された若者たちがストリートカルチャーで履きこなすというロジックは、国や世代が異なっても変わらない。

オリジナルディテールとバリエーションの双方でファンを魅了

ZXシリーズの魅力を広く啓蒙したトピックといえば、英国のスニーカーブティック『Size?』の存在が欠かせない。1980年代の英国でZXがベストセラーとなった背景に後押しされ、Size?は定期的にZX 500の復刻モデルをリリースしている。そしてデザイン誕生30周年を控えた2013年には、ZX 500のファーストカラーを忠実に再現した復刻モデルを満を持して発売。オリジナル発売当時のムーブメントを知る玄人が好む傾向が強かったZXの魅力を、幅広い世代のファンに広めたのである。

ZX FLUXではシームレスアッパーを採用したモデルやスリッポンタイプなども展開。ZX FLUX WEAVE (上)、ZX FLUX SLIP ON IWANTICAN (下) (c) adidas Archive

さらにadidas Originalsが展開したZXベースのアップデートモデルも、ファン層を広めた大きな要因となった。例えば2014年にシームレスアッパーを採用して登場した「ZX FLUX」は、オリジナルを知らない女性層にも軽くて快適なスニーカーとして歓迎され、1990年代のスニーカースタイルと融合させた「ZX TORSION」や3Dプリント技術によって作られる画期的なミッドソールを採用した「ZX 4000 4D」もアップデートモデルの秀作といえる。さらに誕生35周年を記念して2019年に登場した「ZX 10000」シリーズは、1980年代のZXへのリスペクトに溢れるプロダクトであり、コアなスニーカーファンを喜ばせている。

最新のアップデートモデルはインスタ映えを意識したコーディネートとの相性も◎

現代のスニーカーブームにおいて復刻モデルは王道カテゴリーなのだが、オリジナルディテールを完全に復刻したモデルに人気が集中する傾向が強く、アップデートを施したバリエーションはとくに話題にならないケースが少なくない。その点Originalsでは「TUBULER」や「NITEJOGGER」、「EQT SUPPORT ADV」など、スニーカーファンから高く評価されたバリエーションモデルがいくつも存在する。

ZXの機能をさらにアップデートし、履き心地を追求したZX 2K BOOSTが2020年夏に発売

そして現代的なトレンドとアーカイブを融合するセンスに長けたOriginalsが提案する最新のZXが「ZX 2K BOOST」だ。ZXのアイコンディテールであるサイドパネルのスリーストライプスを継承しつつ、アッパーをブーティー構造にアップデート。TPUパーツでZXファミリーらしいディテールを演出しているのもポイントだ。そしてミッドソールにはadidasが誇るクッショニングテクノロジー“BOOSTフォーム”をフルレングスで搭載している。デザインだけでなく、スニーカーに快適な履き心地を求めるユーザーにとっての最適な一足になり得るだろう。

鮮やかなコントラストを描くZX 2K BOOSTはインスタ映えに有利なカラー展開だ

若い世代では足元だけでなく、全身のコーディネートをInstagramに投稿するのが主流になっている。スポーティで健康的な自分らしさを表現するには、ポイントカラーに主張のあるZX 2K BOOSTが活躍してくれるだろう。もちろん純粋に快適さを楽しみたいのであれば、シンプルなカラーで整えられたZX 2K BOOSTもラインナップしている。オリジナルが登場した1980年当時からパフォーマンスシューズだけでなく、ストリート用のスニーカーとしての人気が高かったZXシリーズ。80年代に誕生した意匠を継承しながら現代的なスニーカーライフに寄り添うプロダクトへと正常進化させたZX 2K BOOSTは、現代的なストリートカルチャーを満喫可能な一足なのだ。

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