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アイコニックアイテム100年以上の時を経て愛され続けるスニーカー界のレジェンド ―CONVERSE ALL STAR

Text Hiroshi Sato
Illustration Atsushi Ave
Edit Momoko Naito

ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは、1917年に誕生したバスケットボールシューズのパイオニアCONVERSEの「ALL STAR」だ。当時のプロも絶賛したパフォーマンスシューズであり、現代では世代や性別を問わず愛される定番スニーカーとしての地位を確立したアイコニックアイテムの代表作である。その100年以上も続く歴史は多くのメディアで繰り返し紹介されているので、ここではALL STARのストーリーを簡単におさらいしつつ、現代的なALL STARのトレンドについてスポットを当ててみよう。

ALL STARの知名度を高めたバスケットボーラーのシグネチャーモデル

CONVERSEを代表するモデル「ALL STAR」を知らない人はいないだろう。ALL STARは100年以上の歴史に支えられるアーカイブモデルであり、現代のスニーカーシーンにさまざまなスタイルを提案し続けている。

米国のマサチューセッツ州で1917年に開発されたバスケットボールシューズが「CANVAS ALL STAR」である。当時のALL STARはハイカット仕様のキャンバス素材アッパーに、耐久性に優れるバルカナイズドソールを組み合わせていた。つまり現代のCANVAS ALL STARとほぼ同じディテールで仕立てられていたのである。

ALL STARの歴史が始まった最古のモデル

ALL STARについて語るとき、“100年以上の歴史を持つ世界最古のバスケットボールシューズ”といったフレーズが度々使われている。そのストーリーに多くのファンが敬意を示す背景には単にモデル名ではなく、デザインの本質を100年以上も受け継いでいる点にある。

ALL STARの知名度を高めたのが“チャック・テイラー”の愛称で親しまれていた当時のトップバスケットボーラーのチャールズ・H・テイラーである。テイラーは、現役時代を通じてCANVAS ALL STARを愛用するだけでなく、引退後も多くのプレイヤーにALL STARの良さを広め、CONVERSE側もテイラーや他のプレイヤーのアドバイスを積極的に取り入れてALL STARの完成度を高めていく。例えば1957年に追加されたローカットモデル「OX(オックスフォード)」も、プレイヤーの要望に応えて誕生したバリエーションモデルのひとつだ。1946年にはテイラーのさまざまな功績を讃えてハイカットモデルのアンクルパッチに“チャック・テイラー”の名を記載。現在のデザインに一番近い「ALL STAR」が誕生した瞬間だ。

チャック・テイラー氏

ちなみにチャック・テイラーの名が記載されるアンクルパッチは、デザイン的に目立つシューズのアウトサイドではなく、インサイドにインプットされている。このアンクルパッチはジャンプシュートを放つ際などに両足のくるぶしを保護する目的で採用されたもの。プロ仕様のバッシュとしての役目を終え、ファッションスニーカーとして愛用される現代のALL STARでは、アンクルパッチをアウトサイドに取り付ければ映えるのにと考えるファンがいるかもしれない。だが、そのディテールのルーツが機能美に由来している以上、アウトサイドにアンクルパッチが付いたシューズはALL STARと呼ぶにふさわしくないのだ。

アンクルパッチはもともとくるぶしの保護が目的だったため、インサイドに貼られている

お気に入りのスタイルを引き立てる名脇役

ALL STARは特にスニーカーに詳しくない層からも支持を集めているユーザーフレンドリーなアイテム。このスニーカーが幅広い層に選ばれる理由のひとつは、シンプルでスマートなシルエットだろう。ALL STARはファッション誌のコーディネートや、フェミニンなアイテムが並ぶアパレルショップにディスプレイされるケースも珍しくない。普段スニーカーを履かない女性が「テーマパークに遊びに行くから」という理由でALL STARを指名買いすることも。コーディネートの主役になりうる知名度の高いスニーカーでありながら、シンプルなシルエットでお気に入りのスタイルを引き立てる名脇役としても活躍する。コーディネートに求められる要素を兼ねそろえたALL STARは、誰にとっても手に取りやすいスニーカーなのだ。

そんなALL STARも、店頭に並んでいるプロダクトにはいくつかのバリエーションが存在している。それぞれの特性を知っておくと、スニーカー選びもより楽しくなるに違いない。多くのスポーツショップで見かける“いつもの”ALL STARには、ホワイトやブラックの定番モデルに加え、さまざまなカラーやデザインバリエーションが展開されている。これは直感で選ぶのが正解。目の前にあるALL STARが“好き”か“嫌い”かが重要であり、そこに余計なウンチクは必要ない。

また、スニーカーに対してのこだわりが強く、“買う理由”を重視する層には、国産品の「ALL STAR J」など、クオリティを重視したALL STARがラインナップしている。そのALL STAR Jは、定番と比べてトウスプリングが低めに設定されている上、厚さを感じるアッパー素材やコットンのシューレースを採用し、クラシック感あふれるスニーカーを好むファンの琴線を刺激する。販売価格こそ一般的なALL STARと比べると割高となるが、MADE IN JAPANと印字されるヒールパッチが所有する者の満足感を満たす逸品だ。

ヒールパッチにMADE IN JAPANの刻印が入ったCANVAS ALL STAR J。一つひとつ手作業で施されている

古き良きアメリカンビンテージテイストを楽しむ

そしてもうひとつ、定番品と“J”の間に位置するようなディテールで“ALL STARのベストバイ”と讃えるファンも多い注目アイテムが2013年に発売した「U.S. ORIGINATOR」だ。この古き良きアメリカンビンテージテイストを追求したコレクションは、ウォッシュ加工を施したアッパー生地にツヤのあるラバーパーツを組み合わせ、箱から出したその日から長年履いている相棒のような雰囲気を醸し出してくれる。8ミリ幅のコットンシューレースや金属光沢のあるハトメも、かつてのアメカジブーム時にストリートの主役だった“あの時のALL STAR”を彷彿させてくれる。

ラバーパーツのツヤや8ミリ幅のコットンシューレースがビンテージ感を醸し出す、ALL STAR U.S. ORIGINATOR エイジドホワイト

さらにU.S. ORIGINATORのインソールにはクッション性に優れたウレタンインソールを採用。シンプルなシルエットはそのままに履き心地を向上させているのもポイントで、いいとこ取りでありながらリーズナブルな価格設定なのだ。知り合いにどのALL STARを買おうか迷っている人がいるならば、「どうせならORIGINATORを買っとけば?」と勧めたくなる一足である。見た目は同じに見えるけれど、それぞれにCONVERSEの思いが詰まったバリエーションを展開するALL STARは、デザイン誕生から100年以上を経た今も現代的なライフスタイルに寄り添うアイコニックアイテムの代表格であり、今後もトレンドを取り入れたアップデートを繰り返しながら、幅広い世代に愛用され続けるだろう。

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