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Shoes × Detail

アイコニックアイテムライフスタイルモデルとして最適にチューニングされたスニーカー ―NIKE AIR MAX ZM950

Text Hiroshi Sato
Illustration Atsushi Ave
Photography Masashi Fukumitsu
Edit Momoko Naito

ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは、オリジナル誕生25周年というアニバーサリーに登場したNIKE「AIR MAX ZM950」。前足部にズーム エアを搭載した「AIR MAX 95」の意匠を受け継ぎ、現代のスニーカーシーンに向けて再提案されたアップデートモデルである。単にパーツを組み替えたバリエーションではなく、現代のAIR MAXシリーズに求められるライフスタイルモデルとしての使いやすさを追求し、AIR MAX 95の進化系としてその真髄を感じられる一足だ。

2020年のストリートシーンに再提案されたAIR MAX 95の進化系

日本のスニーカーシーンに大きな影響を与えた絶対的なマスターピース「NIKE AIR MAX 95」の発売25周年となる2020年、そのディテールを受け継ぐ新たなモデル「AIR MAX ZM950」が登場した。日本中を熱狂の渦に巻き込んだハイテクスニーカーブームのトリガーとなった伝説のプロダクトに、現代的なトレンドを落とし込んだAIR MAX ZM950。2020年を象徴するスニーカーのひとつとしてスニーカーファンの記憶に刻まれるに違いない。

1995年に登場したオリジナルのAIR MAX 95

1995年、NIKEのデザイナーであるセルジオ・ロザーノ氏が人体構造や地層からインスピレーションを得てデザインを構築した「AIR MAX 95」。ソールの前後にエア部分が実際に外から見えるビジブルエアユニットが搭載され、それまでに発売されていたどのランニングシューズとも異なる近未来的なプロダクトだった。そのディテールはアスリートだけでなく、流行に敏感なセレクトショップのバイヤーやスタイリストを刺激して、ファッショニスタや芸能人がAIR MAX 95を履いて雑誌やテレビ番組に登場し、ハイテクスニーカーブームを更に焚きつけたのだ。そのムーブメントは当時の若者に共有され、入手困難な特別なスニーカーとして神格化されるに至り、スニーカー少年が大人になった現在もAIR MAX 95の復刻モデルが人気を集めている。AIR MAX 95の伝説や現代の人気はInstagramでも共有され、1990年代のハイテクスニーカーブームを体感していない若い世代のスニーカーファンの物欲も刺激する。ただ、若い世代のファンにとってのAIR MAX 95は“懐かしいモデル”ではなく、個性的でストリートで映える“新しいスニーカー”として楽しんでいるケースも少なくない。

ソール前足部にもビジブルエアユニットが搭載されたのは、ランニングシューズとして初となる

AIR MAXに求められるパフォーマンスは変化している

若い世代がAIR MAX 95を新しいスニーカーと捉えるのと同様に、AIR MAXシリーズ自体も時代の変化に対応した新たなステージへと進化している。最新のスニーカートレンドを反映してAIR MAX 95をアップデートすると、どのようなスニーカーが誕生するのだろうか。スニーカーファンの想像をカタチにしたのが、オリジナル誕生25年目のアニバーサリーに誕生したAIR MAX ZM950だ。軽量なアッパーにTPUパーツでディテールを描き、ズーム エアと270 マックス エアを組み合わせたAIR MAX ZM950は、スニーカー史に新たに加わるニュープロダクトといえる。

AIR MAX 95のアップデート版、AIR MAX ZM950

ランニングシューズとして設計されたAIR MAX 95は、体格の良いランナーでも快適に履けるようにソールの安定性を高めている。しかし、その高い安定性が体格によっては“硬い”と感じてしまうこともあった。それに対してAIR MAX ZM950のヒールに搭載された270 マックス エアは普段使い向けにチューニングが施されているため、スポーツ時のような激しい衝撃を与えずとも柔らかなクッショニングが体感できる。大容量のビジブルエアから体験できる“空気の上を歩く感覚”を誰でも楽しめる点は、多くのスニーカーファンを満足させる意味でのアドバンテージだ。

かかとの270 マックス エアユニットと前足部のビジブルエア ズームユニットが、足裏を快適に保つ

さらに足入れのスムーズさもアップデートされている。ハイエンドのランニングシューズから、ライフスタイルモデルへ進化したAIR MAX 95は、その使用目的ゆえにアッパーのホールド性を非常に重視している。その高いホールド性はプロダクトの魅力なのだが、AIR MAX ZM950ではシュータンや履き口の部分に伸縮性に優れるネオプレーン素材を採用し、高いホールド性と足なじみを両立している。NIKEファンならご存知の通りネオプレーン自体は新しい素材ではないものの、素材の使い方からチューニングの進化を感じ取れるだろう。

ホールド力のあるシュータンのネオプレーン素材には穴が空いており、通気性が高く足なじみがいい

AIR MAX ZM950は誰にでも分かりやすい現代のAIR MAX 95だ

そして着用してまず感じられるのが、「AIR MAX 95より体が前に進む」ということ。これはソールの形状に由来する部分が大きく、AIR MAX 95と比べると、AIR MAX ZM950のソールはより大きなカーブが描かれている。そのため重心が前に移るとシューズが傾斜して、体を前に押し出してくれるような印象を与えるのだ。そうしたソール形状含め、AIR MAX ZM950は街中で履く楽しさを進化させた“誰にでも分かりやすい”AIR MAX 95と評して過言ではない。

つま先の合成繊維が耐久性を高め、AIR MAX 95の要素を受け継いだカーブを描くディテールは、軽やかな歩行を実現

最後に、既存のAIR MAX 95ファンに伝えておきたいポイントがある。AIR MAX ZM950のサイドビューでは確かにAIR MAX 95の意匠を受け継ぐディテールが確認できるが、大胆なソールユニットが目立ち、全く別物のスニーカーだと感じるかもしれない。これはAIR MAX 95に対して特に思い入れの強い日本のスニーカーファンならではの感覚だろう。ただAIR MAX ZM950を実際に着用して上から見下ろしたときの印象は、驚くほど“AIR MAX 95らしさ”を覚える仕上がりだ。Instagramで映えるスニーカーを求める世代を満足させるだけでなく、過去のハイテクスニーカーブームを経験したスニーカー通も、当時の空気を感じ取れるハズだ。

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