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アイコニックアイテムストリートもサステナビリティの時代へ ―Timberland 6-INCH BOOTS

Text Hiroshi Sato
Illustration Atsushi Ave
Edit Momoko Naito

ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは、鮮やかなウィートイエローが足元のアイコンとして映えるTimberlandの「6-INCH BOOTS」だ。“イエローブーツ”のニックネームで親しまれる防水仕様のレザーブーツは1970年代からデザインを変えることなく生産され続けるプロダクトで、男性だけでなく、ボリュームのあるブーツを好む女性にも人気の定番モデルだ。その誰もが知る定番ブーツも時代が求めるキーワードを反映し、常に進化を続けているという。今回のアイコニックアイテムではイエローブーツ誕生の歴史と、Timberlandが進む未来について紹介する。

画期的な防水ブーツの商品名がブランド名に採用された

ヒップホップ系ファッションやアメカジ、プレッピースタイル、そしてサーフガール系カジュアルにも大きな影響を与えたTimberland。“森林”という意味の名前を冠したブランドは、国内外のストリートシーンに大きな影響を与えている。中でもイエローブーツの名で親しまれる「6-INCH BOOTS」(正式には6インチ プレミアム ウォータープルーフ ブーツ)は、幅広いシチュエーションで快適な履き心地を提供しながら時代の変化に合わせて進化し続ける、Timberlandを代表するアイコニックアイテムである。Timberlandの歴史は1918年まで遡る。マサチューセッツ州のボストンで靴屋を創業したネイサン・シュワーツは、1965年に射出成型技術を用いた“インジェクション・モールディング・テクノロジー”を開発し、ソールとアッパーを縫い合わせることなく一体化させることに成功する。

Timberlandの創業者、ネイサン・シュワーツ

創業の地、アメリカ合衆国東部の森林地帯は、豪雪地帯ではないものの冬の平均最低気温は氷点下となり、人々は春になってもなお、足元のコンディションが悪い中での生活を強いられていた。インジェクション・モールディング・テクノロジーを用いて生産されるブーツはソールとアッパーを縫い合わせる必要がないため、縫い目から水が浸透するリスクがなく、保温性にも優れている。人々の暮らしを足元から快適にするという目的の元、このアイコンは開発されたのだ。
1973年発売された、この製法による世界初の防水保証をつけたウィートイエロー(小麦色)のブーツは、快適な履き心地が瞬く間に評判となる。その画期的なブーツは「Timberland」と命名され、1978年には企業名もTimberlandへと変更された。ブランド名のルーツとなったプロダクトが他でもない、イエローブーツこと6-INCH BOOTSなのだ。

ミックスカルチャーの歴史を経てストリートの定番になったイエローブーツ

イエローブーツのアッパーには、耐久性と防水性を確保したヌバックを採用。さらにヒールサイドに刻印されたマークはブランド名であるティンバー(樹木)をロゴにしたもので、イエローブーツには欠かせないディテールとして広く知られている。ゴールドのアイレットには防錆加工が施され、足首部分にはフィット性を向上させるパットを装着。ラバー製アウトソールの“タンクパターン”は、このブーツを象徴する特徴のひとつで、ストリートだけでなく、アウトドアフィールドにおいても優れたトラクションを約束する。

イエローブーツの基本的なディテールは1970年代から受け継がれているが、その細部にフォーカスすると、クッション性に優れ、長時間着用しても疲れにくいアンチファティーグと呼ばれる中敷きを搭載している。さらに優れた保温・通気性を発揮するプリマロフトRインサレーションをライニングに採用するなど、ブーツ界を代表するオールラウンダーにふさわしい進化を続けている。昨今の環境問題への対応ももちろん考慮しており、100%リサイクルPET素材のシューレースを使用。アッパーレザーは国際認証機関レザー・ワーキング・グループ(LWG)が環境に配慮した生産方法と認定したタンナリーから調達している。

見た目の美しさだけでなく機能性にも優れるイエローブーツは、1980年代から1990年代にかけてブラックミュージックカルチャーと共に世界的なムーブメントを巻き起こす。例えば1992年に結成し、当時のストリートファッションに大きな影響を与えたヒップホップグループ、ウータン・クランもイエローブーツを愛用したアーティストのひとり。

さまざまなライフスタイルにブーツを取り入れるのが当たり前になった現在では、イエローブーツ=ヒップホップというイメージは薄れているものの、スニーカーのプロデューサーとしても名高いカニエ・ウェストがプライベートでイエローブーツを履いているのも、1980年代のミュージックシーンと暮らした歴史と無関係ではないだろう。

ラグジュアリーブランドJIMMY CHOOをはじめ、多くのコラボレーションモデルが登場

自然から消費した以上のものを自然に還元する製品づくり

現代のイエローブーツはストリートシーンだけでなく、昨今のキャンプブームの追い風を受け、自然を身近に感じるアウトドアライフスタイルを好む層からも支持を集めている。Timberlandは大自然の中で生まれたブランドゆえ、環境問題に取り組んできた歴史は長い。“よりグリーンな未来はより良い未来である”という信念のもと、2025年までに世界で5,000万本の植樹を行うことを発表し、各国のNPO団体などと協業して目標達成に取り組んでいる。また、2030年までに、自然から消費した以上のものを自然に還元する製品づくりを行う、“ネット・ポジティブ”も宣言しており、“廃棄物ゼロ”をはじめとする循環型デザイン(サーキュラー・デザイン)の推進と、使用する天然素材の調達を環境再生型農業を基盤とする調達先に集約することで達成を目指す。
循環型デザインでは、廃棄されてきたペットボトルやスクラップウールを再利用して、使い古した製品を新しくつくり変えることで、新たに自然から得る素材を削減できる。

イエローブーツに限らず、多くのレザーブーツファンはアッパーに天然皮革を使用したアイテムに魅力を感じるだろう。ただ、その天然皮革がどのような環境で生産されているのかまで考える機会は決して多くはない。過剰な栄養を与える農場では生産性が向上するかもしれないが、そうした環境は自然に負荷を与えてしまう。

素材調達先の一つ、米国のサウザンドヒルズ・ライフタイム・グレーズドでは、ありのままの自然を模倣して動物を放牧している

これに対して環境再生型農業は、自然界でみられる多様性を再現して土地に休息と回復の機会を与えながら農業を営むというもの。健康で潤いのある肥沃な土地を育て、最終的には土地と農家の双方に利益を生み出すよう働きかける取り組みだ。ユーザーやメーカーだけにメリットがあるのではなく、生産者にも利益を生み出さなければこうした活動を持続させることは難しい。持続可能性を意味する“サステナビリティ”という考え方が、現代的な生活をおくる人々にとって欠かせないキーワードとなったいま、デザインや機能性だけでなく、手にした商品がどのような環境で生産されているかは無視できなくなった。その意味でTimberlandのイエローブーツは安心して手に取ることができるレザーブーツのひとつといえる。1970年代のデザインを受け継ぐイエローブーツは、これからも進化の歩みを止めることはないだろう。

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