ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは、米国ミネソタ州で生産されるRED WINGの「IRISH SETTER」。1980年代のアメカジブームを経験した世代にとってはジーンズの相棒として親しまれるMADE IN USAのワークブーツだが、そのブームから約40年の時間を経て、IRISH SETTERとの新たな付き合い方が注目されている。今回はかつてストリートシーンの王様といわれたワークブーツにフォーカスをあて、アメカジブームを知らない世代こそ注目して欲しい秘めた魅力をお伝えしよう。

IRISH SETTERはメーカーの正式名称ではない?

米国ミネソタ州のレッドウィングという街で1905年に誕生し、街の名前を企業名に用いたブーツメーカー“RED WING”。創業者であるチャールズ・ベックマンがかつて働いていたタンナリーを傘下に治めて以降、靴生産に用いる革も自らつくる世界でも稀なメーカーとなった。1980年代のアメカジブームを経験した世代にとっては王道であり、憧れのワークブーツだろう。当時のRED WING人気を牽引した「IRISH SETTER」とLEVI’Sのコーディネートは鉄板で、多くの芸能人やストリート誌で活躍する有名人が愛用していた。そして現代、ワークブーツに求められるシチュエーションが多様化し、IRISH SETTERもジーンズの相棒としてだけでなく、幅広いコーディネートを引き立てるプロダクトとして再び注目を集めている。

レザーの色が猟犬アイリッシュセッターの毛色に似ていることから、IRISH SETTERと呼ばれるように

IRISH SETTERと呼ばれているブーツにはさまざまなバリエーションが存在するが、その源流は1950年にハンティング用のブーツとして開発された「877」と呼ばれる8インチブーツだ。877のラベルには猟犬のアイリッシュセッターがデザインされ、使用されるレザーもアイリッシュセッターの毛色を連想させることから、“IRISH SETTER”と名付けられた。ちなみにIRISH SETTER、もしくは“セッター”と呼ばれファッショニスタに親しまれているワークブーツ、現在はメーカー公式のプロダクトネームではなく、ニックネーム的な呼び名である事実は意外と知られていない。IRISH SETTERという名称はRED WING内のハンティング&フィッシングブーツのブランド名として使用されているからだ。

本物のワークブーツでありながらストリートでの履き心地も秀逸

そして1980年代に“ワークブーツの王様”として君臨したIRISH SETTERといえば「875」と呼ばれる6インチブーツだ。875はつま先部分のモカシン縫いが特徴で、アッパーにはセコイアの樹皮を使用したなめし革、オロラセットを使用。赤茶色のレザーとオフホワイトカラーのトラクショントレッドソールが描くコントラストはストリートシーンの絶対的なアイコンとして認知され、当時の若者はバイト代や小遣いを全振りしていたのだ。

使うほどに味が出るIRISH SETTER、レザーを育てるのも楽しみのひとつ

875がファッションアイテムとして日本の市場に受け入れられた理由は前記した通り有名人が愛用した背景もあるが、タフで本格的なMADE IN USAのワークブーツでありながら、アスファルトやコンクリートで舗装された街中でも使いやすいという特性が大きい。875をはじめIRISH SETTERに使用されるレザーは最初こそ硬さを感じるものの、足に馴染むと非常に心地良く、文字通り“ブーツを育てる楽しみ”に溢れている。さらにトラクショントレッドソールにもある程度の柔らかさとクッショニング性があり、インソールの形状も履くごとに馴染み、快適さが増していくのだ。

数多あるワークブーツの中には新品状態がベストコンディションで、使用すると劣化が進むだけのプロダクトも存在する。世の中に“一生モノ”という便利なキャッチフレーズをうたう商品は少なくないが、本当に一生モノの相棒になり得るワークブーツは限られているのだ。その点IRISH SETTERはすり減ったソールを交換すれば、親子二代にわたって履くことも難しくない。使い込めば使い込むほどに履き心地が向上するIRISH SETTERは、一生モノと呼ぶに相応しい本物のワークブーツといえるだろう。

変わらない伝統だけではなく、着脱がしやすいジッパーユニットのカスタムパーツをラインナップに加えるなど、革新を続けている

ジーンズ以外との相性の良さとサステナビリティな特性が再評価

1980年代から1990年代のアメカジブームで一世を風靡したが、ジーンズとの相性の良さはIRISH SETTERが持つ魅力のほんの一部でしかない。その事実を裏付けるように2020年に発刊されたRED WINGを特集したムック本でもジーンズだけでなく、カーゴパンツやスウェットパンツとIRISH SETTERをコーディネートしたスタイルサンプルが数多く紹介されている。そうした自由な楽しみ方は、IRISH SETTERに特別な思い入れが少ない若い世代のファッショニスタこそ使いこなせるハズだ。

履きやすさを追求したレディースラインも登場し、若い世代や女性からも注目を集めている

またIRISH SETTERは現代的なライフスタイルには欠かせないサステナビリティというキーワードとも相性が良い。伝統的なグッドイヤーウエルト製法で仕立てられているIRISH SETTERはすり減ったソールを交換可能なワークブーツであり、靴職人目線でも修理しやすいデザインに仕立てられている。履きなれたワークブーツがダメージを受けた際に買い直すのではなく、専門の職人がリペアして再び使えるようにするサイクルはIRISH SETTERが誕生した当時からの伝統であり、時代のニーズがRED WINGに追いついたと評しても過言ではない。何より全国に店舗を展開するABC-MARTでリペアを受け付けているのは、サステナビリティを意識する層にはメリットとなるだろう。

本当の意味で一生モノと呼べるワークブーツだからこそ、さまざまなスタイルに合わせて楽しむ。これが現代の正しいIRISH SETTERとの付き合い方だ。

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