ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは、PUMAを代表する定番モデルの「SUEDE」だ。モデル名の由来でもあるスウェード素材のアッパーにブランドを象徴するフォームストリップをインプットしたシンプルなルックスは多くのスニーカー好きだけでなく、幅広いコーディネートに取り入れやすいことからスニーカーを好むファッショニスタも愛用している。そしてPUMAを熱狂的に支持するファンの間では、2021年はSUEDEにとって特別な年になると噂されているのを御存じだろうか。ここからは50年以上にもわたるSUEDEの歴史を振り返ると共に、2021年に注目すべき理由もレポートしていこう。

プロダクト名に「SUEDE」と記載されるようになったのは1990年代から

50年以上の歴史を持ち、誰もが知るPUMAの定番モデル「SUEDE」は、デザイン誕生からSUEDEと呼ばれていたわけではない。この源流となるモデルは、1968年に発売された「CRACK」と呼ばれるアッパーにスウェード素材を使用したトレーニングシューズだ。このCRACKに目を付けたのが、NBAニューヨーク・ニックスで活躍していた“クライド”のニックネームで知られるウォルト・フレイジャーである。それまで他メーカーのバッシュを着用していたウォルト・フレイジャーは、CRACKをベースに自身のサイズに合わせた幅広の足型を使用したシグニチャーモデルを製作するという条件でPUMAと契約。その際にバスケットボールのコートで高いグリップを発揮するソールユニットが搭載され、現代のSUEDEに通じるディテールが完成したのだ。

SUEDEの源流モデル「CRACK」
Credit: PUMA Archive

ウォルト・フレイジャーは彼の背番号“10”がニューヨーク・ニックスの永久欠番になるほど人気と実力を兼ねそろえたNBAプレイヤーであり、そのシグニチャーモデルも多くのファンから愛されていた。こうした背景もあり、1979年にPUMAとの契約が終了した後もスウェード製バッシュの継続販売が熱望されていた。そうしたファンのニーズに応えるため、アッパーのサイドパネルに刻印されていた“Clyde”の文字を外して販売を継続し、現在のSUEDEへと歴史を繋げたのである。

NBAニューヨーク・ニックスで活躍していた、ウォルト・フレイジャー
Credit: PUMA Archive

トレーニングシューズをルーツに持ち、バッシュとして歴史を重ねたSUEDEではあるが、商品名にSUEDEが使われたのは最近のこと。シューズボックスに“PUMA SUEDE”というプロダクト名が記載されたのは1990年代に入ってからで、それ以前のシューズボックスには“PUMA”とだけ記載されていた。さらに近年のSUEDEではお約束のディテールとなる、アッパーのサイドパネルに刻印される“SUEDE”の文字は、2000年代以降にヨーロッパ限定で販売されていた「SUEDE CLASSIC」に初採用されたディテールだ。これは50年以上にわたるSUEDEの歴史としてはごく最近の出来事になる。歴史的にはSUEDEが先で「CLYDE」が後と認識しているファンも少なくない背景には、1968年のCRACKがスウェード製のアッパーであることから、そのトレーニングシューズをSUEDEだと誤解している可能性が否定できない。

SUEDE選びに迷ったら5色の定番カラーを候補に加えたい

国内でSUEDE人気に火が付いたのは1990年代の初頭である。当時PUMAを扱っていた商社ではSUEDEを展開しておらず、並行輸入品を扱うセレクトショップ等で見かけるのみであった。そうしたなか、ビースティ・ボーイズやジャミロクワイ、デーモン・アルバーンがSUEDEを着用する画像が音楽雑誌に掲載されると、国内では入手困難だった希少性と世界的なアーティストが履いた憧れの相乗効果でSUEDEがブレイクする。さらに日本のキーリテイラーと正規代理店がタッグを組み、1996年にスペシャルメイドのPUMA SUEDEがリリースされると人気に拍車がかかり、SUEDEはPUMAに欠かせないモデルのひとつとして広く認知されるようになったのだ。

Credit: PUMA Archive

PUMAを代表するモデルだけに、SUEDEは5色の定番カラーが人気を牽引している。黒/白や紺/白、さらに赤/白と灰/白、そして黒/黒にて展開される定番カラーは幅広いコーディネートに取り入れやすく、スニーカーにこだわりを持つファンだけでなく、若い世代のファッショニスタにも支持されているのも頷ける。さらに2020年に発売されたイタリア製の「SUEDE VTG MII」のように、定番カラーのSUEDEに高品質な素材を贅沢に使用したバリエーションも展開され、ファッションアイテムとしての評価も急上昇している。初めてのSUEDE選びに迷ったら、まずは5色の定番カラーを候補に加えておきたい。この定番カラーに対してシーズナルカラーと呼ばれるバリエーションは、発色に優れるスウェードレザーの特性を活かした鮮やかなカラーが印象的だ。実はSUEDEのシーズナルカラーは再生産されることがなく、似た色味でも比べると微妙に異なっている。言い換えれば“一期一会のスニーカー”であり、店頭でお気に入りのカラーに出会った際には迷わず購入するのがのちのち後悔しない秘訣といえる。

素材を活かした鮮やかな色が特徴のシーズナルカラーは、再生産されない希少性も魅力のひとつ
Credit: PUMA Archive

2021年はSUEDEファンにとって特別な1年になる

そして2021年はSUEDEファンにとってトピックとなる1年になりそうだ。新たにラインナップした「SUEDE VTG(ヴィンテージ)」は“究極のオリジナルディテール再現”を目指してデザインされた、2018年発売の「SUEDE “90681、90681S”」を2年かけて更にアップデートした逸品だ。トゥキャップ周りのバランスが再調整され、よりオリジナルに近いディテールとなり、熱心なSUEDEファンであれば見逃せないプロダクトといえるだろう。また「CLASSIC XXI」と名付けられたSUEDEは、アジアを中心に展開されていた細身のシルエットを再現したバリエーションで、SUEDEにスタイリッシュなシルエットを求めるファッショニスタにとっては“使える”スニーカーとなる一足だ。さらに「SUEDE MID」も久しぶりに登場予定で、こちらもクラシカルなディテールを継承しつつ、履きやすさを向上させている。

SUEDEは、シンプルでスタイリッシュなルックスだけでなく、50年以上の歴史とストーリー、ブランド側のこだわりが詰まっている
Credit: PUMA Archive

多くのスニーカーファンにとって身近なアイコニックアイテムのひとつであるSUEDE。誕生50周年を祝してさまざまなコラボレーションが展開された2018年も盛り上がったが、過去のアーカイブモデルに敬意を表したVTGやCLASSIC XXIがラインナップする2021年も特別な1年になるだろう。

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