ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは1990年代のadidas製バッシュを代表する「FORUM」。2020年末、2021年2月と二度にわたってオリジナルのファーストカラーをフィーチャーした「FORUM 84 HIGH/LOW」がリリース。すると瞬く間に完売し、根強い人気を再認識させたアイコニックアイテムだ。今回はバスケ部部員が憧れた80年代当時のエピソードや、90年代に神格化されていたフランス製FORUMの歴史を振り返りつつ、若い世代や女性のスニーカーファンがSNSを中心にFORUMの新たな魅力を発信しているムーブメントにもスポットを当てていこう。

オリンピックの開催に合わせてラインナップした伝説のバッシュ

adidas「FORUM」のオリジナルは1984年に発売された。同年のロサンゼルスオリンピックに合わせて開発されたバスケットボールシューズで、米国のバスケットボール代表チームの選考会で選手が着用したエピソードも有名だ。このプロダクトネームはオリンピックの会場であり、1999年までNBAロサンゼルス・レイカーズが本拠地として使用していたアリーナThe Forumに由来する。

FORUMのファーストモデルはホワイト&ブルーのハイカットモデル。特徴的なアンクルストラップは足首部分のテーピングを参考にした“クリスクロス・システム”と呼ばれるディテールで、後に追加されたローカット版にもストラップが搭載された。さらにランニングシューズに使われていたプラスチック製のヒールカウンターパーツや、ナイロン状のネットが衝撃を分散させて反発力を生み出す“デリンジャーウェブネット”も採用するなど、当時のadidasが有するテクノロジーを惜しみなく採用。オリンピックに出場するトッププレイヤーの足元を支えるに相応しい一足に仕立てられた。

ホワイト&ブルーのカラーリングとアンクルストラップが特徴的(c) adidas Archive / Studio Waldeck

ただし、搭載されたテクノロジーに比例して価格も特別なものとなり、オリジナルFORUMの国内定価は2万9000円に設定されていた。1984年の為替レートが1ドル=約250円だったことを考慮してもかなりの高額商品といえ、同じ時代に発売されたNIKE「AIR JORDAN(AJ1)」の1万7800円、CONVERSE「ALL STAR PRO」の2万円と比べても突出した高額バッシュであった。当時のバスケ部に所属する学生にとっては、まさに“高嶺の花”だったのである。

1990年代にはストリートのアイコニックアイテムとなった

時代を先取りするハイテクバッシュとして誕生したFORUMは、やがてストリートアイコンとして愛されるようになる。1980年代後半に発売された海外のHip Hop系音楽雑誌にはFORUMのニューカラーが取り上げられ、海外の音楽シーンに敏感なファッショニスタがFORUMをファッションアイテムとして着用したのに続き、1990年代のアメカジブームでFORUM人気が加速。

古着を取り入れた当時のコーディネートでLevi’s「501XX」が王様だったのと同じく、フランス製のadidasはスニーカーヒエラルキーにおいて頂点にカテゴライズされる存在だったのである。フランス製のFORUMは「COUNTRY」や「STAN SMITH」と共にスニーカーファンの憧れで、それを履くことが古着コーディネートの上級者の証とされていた。当時のアメカジブームを経験した世代であれば、今でも“フランス製のadidas”というキーワードだけで気持ちが前のめりになるに違いない。

1984年にリリースされたオリジナルの「FORUM」(c) adidas Archive / Studio Waldeck

さらに1990年代後半に大阪エリアを中心に広まったダックフットブームでも、FORUMは主役級スニーカーであり続けた。ダックフットとは“でかいバッシュ”を意味するもの。フランス製のFORUMのような人気モデルのグッドサイズ(27センチ前後)が高額なプレミア価格で取引されていた状況に対するアンチテーゼから発生したムーブメントである。

比較的手に取りやすい価格で古着屋の店頭に並べられていた30センチ以上の売れ残りサイズを履くコーディネートが人気を集めたのだ。このダックフットブームにおいてもFORUMは憧れのスニーカーであり、当時のストリート雑誌に掲載されたストリートスナップでも格別の存在感を放っていた。

令和時代のFORUMは多彩なコーディネートに取り入れるのが正解

2021年春、当時のデザインを踏襲しながらも、現代に合わせたミニマルなスタイルにアップデート (c) Cosmo Yamaguchi

1990年代にadidasを代表するバッシュと認知されたFORUMは、2000年代に入ると様々な復刻モデルがラインナップされるようになり、多くのスニーカーファンにとって身近な存在になっていった。その過程でファッションデザイナーのJeremy ScottやヒップホップレーベルのDef Jamとのコラボレーションモデルがリリースされたのも、ファッション性の高いスニーカーとして印象付けた要因のひとつだろう。

Jeremy Scottコラボレーションモデル「JS Forum Mid “Money”」 (c) adidas Archive / Studio Waldeck

そして現代のスニーカーシーンでは、オールドスクールでレトロな雰囲気とボリューム感を併せ持つ80年代のバッシュが人気だ。コーディネートに取り入れやすい特性でありながら、Instagramで個性を主張できる80年代バッシュは、現代のスニーカーファンにとって使える一足となり、現代のスニーカートレンドを象徴しているかのようだ。

ストリートに溶け込み、コーディネートしやすいデザインが魅力 (c) Cosmo Yamaguchi

SNS上で広がるこうした動きをみると、アメカジブームを経験した世代にとって懐かしいスニーカーの筆頭であるFORUMが、若い世代のスニーカーファンにレトロな雰囲気のニューモデルと歓迎されている流れは興味深いと感じるだろう。オリジナルカラーに拘ることなく、ワントーンのFORUMをスウェットパンツに合わせるコーディネートは現代的で、スカート姿の女性が足元にFORUMを選んでいるのも新鮮だ。現代のFORUMが提案する多様性に溢れた魅力は、2021年のトピックになりそうだ。

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