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アイコニックアイテムスポーツシューズをストリートで楽しむ文化を創造した伝説のスニーカー ―adidas ORIGINALS SUPERSTAR

Text Hiroshi Sato
Illustration Atsushi Ave
Edit Momoko Naito

ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。
今回のアイテムは、デザイン誕生50周年を迎えたadidas ORIGINALS SUPERSTAR。シェルトゥと呼ばれる特徴的なつま先のデザインを持ち、大定番として幅広い世代に愛され続けるスニーカーのマスターピース(傑作)にスポットを当てる。

ルーツは1960年代に誕生したバスケットボールシューズ

ルーツは1960年代に誕生したバスケットボールシューズ

バスケットボールシューズとして展開された広告ビジュアル (c)adidas Archive

貝殻を連想させるデザインから“シェルトゥ”と呼ばれるパーツをつま先に装着するSUPERSTAR。そのルーツは1960年代にデザインされたバスケットボールシューズだ。キャンバス生地を使ったバスケットボールシューズが主流だった当時、adidasはアッパーの素材にレザーを使用したハイカットモデルの「プロレザー」と、ローカットモデルの「スーパーグリップ」を製作した。柔らかく、耐久性に優れたレザーを使用した新作シューズは、伝説のバスケットボールプレイヤーのひとりであるカリーム・アブドゥル・ジャバーが「足に三本線がプリントされているようだ」と絶賛している。

左右で異なる足の形に合わせて設計された、シェルトゥ開発時のスケッチ cadidas Archive

左右で異なる足の形に合わせて設計された、シェルトゥ開発時のスケッチ (c)adidas Archive

現在とほとんどデザインが変わらない1969年に発売当時のSUPERSTARは、いまも時代を超えて愛されている cadidas Archive

現在とほとんどデザインが変わらない1969年に発売当時のSUPERSTARは、いまも時代を超えて愛されている (c)adidas Archive

そのバスケットボールシューズのコンセプトを受け継ぎ1969年に改名したのがSUPERSTARだ。全盛期には7割以上のNBAプレイヤーが着用したと伝えられ、SUPERSTARの名にふさわしい人気を集めていた。初期にはシェルトゥの無い“ノーシェル”やラバーパーツを小型化した“ハーフシェル”といったバリエーションも存在したものの、ごくわずかな期間しか生産されておらず、基本的には1969年当時のデザインに大きな変更を加えないまま、現代に伝えられている。

スポーツとファッションの壁を破った、ヒップホップカルチャー

SUPERSTARを着用してステージに立つRun-D.M.C. cLawrence Watson

SUPERSTARを着用してステージに立つRun-D.M.C. (c)Lawrence Watson

プロのバスケットボールプレイヤーに愛されたシューズが、ストリートで楽しむスニーカーとしても人気を集める転機となったのは、1980年代を代表するヒップホップ・グループRun-D.M.C.の存在が欠かせない。ヒップ・ホップのアルバムとして初のゴールドディスクを獲得したRun-D.M.C.は、SUPERSTARを愛用したエピソードで知られ、シューレースを外したギャングスタイルに多くの若者が憧れを抱いていた。

オーディエンスが靴を掲げて熱狂する姿から、adidasがRun-D.M.C.を広告塔に起用した cLawrenceWatson

オーディエンスが靴を掲げて熱狂する姿から、adidasがRun-D.M.C.を広告塔に起用した (c)Lawrence Watson

そして1986年にリリースした10thシングル『My adidas』では、ライブに詰めかけたオーディエンスが曲に合わせて、手にしたadidasのスニーカーを掲げるムーブメントを生み出したのだ。その熱気から新たなカルチャーの可能性を感じ取ったadidasは、Run-D.M.C.をプロモーションキャラクターとして活用。これはスポーツブランドがアーティストを広告塔に起用した初の事例であり、スニーカーとストリートカルチャーの蜜月な関係が誕生した瞬間として語り継がれている。

多様性を持つスニーカーとして進化を遂げる

35周年記念ボックス cadidas Archive

35周年記念ボックス (c)adidas Archive

SUPERSTARは1990年代にはファッションアイテムとして定着し、2000年以降にも様々なプロモーションが展開されている。2005年にスタートした、adidas ORIGINALSの高級ラインとして知られる“adidas Consortium”では、最初のローンチとしてSUPERSTAR誕生35周年を祝うリミテッドモデルを多数リリース。2015年の誕生45周年に合わせ、1980年代のディテールを再現した“SUPERSTAR 80s”の展開をスタート。SUPERSTARにオールドスクール感を求めていたヴィンテージスニーカーファンを魅了している。

アメリカの音楽プロデューサー、ファレル・ウィリアムスとコラボした「スーパーカラー」は、50のカラーバリエーションがある cadidas Archive

アメリカの音楽プロデューサー、ファレル・ウィリアムスとコラボした「スーパーカラー」は、50のカラーバリエーションがある (c)adidas Archive

そして2020年、誕生50周年を迎えたSUPERSTARから感じ取れるのは“多様性”というキーワードだ。SUPERSTARらしさを際立たせる定番モデルに加え、オリジナルデザインに手作り感をプラスしたアレンジモデルや、様々なジャンルで活躍するクリエイターとのコラボレーション企画もスタートさせている。

2020年のSUPERSTARに正解は無い。世代や性別、そしてあらゆるコーディネートと相性が良いスニーカーだ。そして長い歴史に裏付けられるSUPERSTARは、誰が履いても特別なスニーカーになり得る。Instagramを中心に拡散するスタイルサンプルにおいて、多くの女性がSUPERSTARを履いたコーディネートをポストしているのも、この歴史的な名作が持つ多様性を裏付けている。

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