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アイコニックアイテム
ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。今回のアイテムは、VANS創業時代のスタイルを現代のスニーカーシーンに受け継ぐ「AUTHENTIC」。1970年代のデザインを継承しながら古臭さを感じさせないAUTHENTICは、さまざまなライフスタイルに寄り添い、新たなカルチャーを導き出すツールとしても注目すべきプロダクトといえる。今回は、AUTHENTICとスニーカーカルチャーの関係にフォーカスして、50年以上も愛され続ける魅力の一端を再確認する。
カリフォルニア州アナハイムで1966年3月16日に創業したVANS。開店初日に12人の客にデッキシューズを販売したエピソードもスニーカーファンに広く知られている。そして1970年代前半のスケーターが愛した初期のディテールを現代に受け継ぐのが、「AUTHENTIC」だ。オリジナルは当時「STYLE 44(#44)」と呼ばれ、シンプルなパーツを組み合わせたアッパーに、製造時の手間は掛かるものの抜群の接着強度を発揮するバルカナイズド製法でソールユニットを装着。高いグリップ力を発揮するラバーソールの組み合わせがカリフォルニアのスケートボーダーに愛された。

AUTHENTICから進化した「ERA」発売当時の広告
現代の店頭に並んでいるAUTHENTICも、基本的にはSTYLE 44時代の製法を継承。ノスタルジックな雰囲気を醸し出すソールユニットは、今もバルカナイズド製法を採用し、ハンドメイドで丁寧に熱圧着されている。その接着強度は「ソールの貼り替え修理が出来ない程に高い」とされ、スケートボーダーをはじめ、スニーカーにタフネスを求める層から変わらぬ信頼を得ている。

ソールのバルカナイズド製法は現在も受け継がれている
AUTHENTICを合わせたスタイリングは、スリムなパンツにTシャツを合わせたノームコアや、レイヤードを使いこなす外国人のコーディネートが多い。そのため「本物志向の大人のためのスニーカー」といった印象を持つかもしれない。確かにカジュアルなスタイルだけでなく、スーツやジャケットに合わせても様になるが、実際のAUTHENTICは手頃な価格や入手しやすさもあり、「いつもの一足」と表現すべき身近な存在だ。
スペック面では1970年代のディテールを受け継ぐ定番モデルに加え、スケートボーディングでの着用を前提にしたスケートオーセンティックや高いクッション性を発揮するコンフィクッシュ、サステナビリティを意識したプロダクトラインまで幅広いラインナップが展開されている。

現代のAUTHENTICにはさまざまなバリエーションが展開され、性別や世代、好みのスタイルを問わずお気に入りの一足を見つけられる
VANSが生まれた北米のストリートシーンでは、AUTHENTICに代表されるシンプルなスニーカーがライフスタイルとより密生な関係を築いている。現地では新品のスニーカーを履く行為が彼らのプライドであり、ダメージが入ったスニーカーはゴミ箱に捨てる文化が根付いている。
ベースボールのリーディングブランドであるNEW ERAのサイズシールをバイザーに貼ったまま被るスタイルや、北米のラッパーが使う「Fresh」というフレーズも、新品のアイテムを身に付ける行為に価値を見出すライフスタイルを象徴している。そうしたFreshなライフスタイルを維持するためには、AUTHENTICのような身近で本物志向のスニーカーが欠かせない。

VANSを語る上で欠かせないのがアートとの蜜月な関係性だ。AUTHENTICをはじめ、シンプルなVANSのシューズはアッパーにグラフィックを描き、自分だけの一足にカスタムするスニーカーカルチャーを生み出した。そのスタイルは多くのアーティストに刺激を与えるだけでなく、VANSブランドもアーティストを支援する活動を早くから展開している。そのスタンスは2022年も変わらない。

2022年の干支である虎をモチーフに、チェン・インジーの作品を落とし込んだ
ここで紹介する水墨画のようなグラフィックを落とし込んだAUTHENTICも、VANSのアーティストパートナーであるチェン・インジーの作品からインスピレーションを得たプロダクトだ。中国の伝統的な水墨画と西洋的なグラフィティをミクスカルチャーしたチェン・インジーは、世界で最も有名なストリート・カルチャー誌『Complex』で「あなたが知る必要がある25人の現代中国人アーティスト(25 Contemporary Chinese Artists You Need to Know)」に選出され、ルイ・ヴィトンやカルティエ等のハイブランドとのジョイントでも成功を収めたアーティストである。
このAUTHENTICには“Stay Hungry(飢え)”と名付けられたテーマが反映され、虎のポートレートをデザイン化。飢餓の中で休眠し、成長を遂げ、時代に足跡を残そうと努力するチェン・インジーが手掛けるクリエイティブを象徴する作品に仕立てている。1970年代のスタイルを受け継ぐAUTHENTICは、現代の若者がアートの先端に触れるきっかけとしても活かされているのだ。