



Shoes × Detail
アイコニックアイテム
ブランドを代表するアイテムのルーツを紐解き、その魅力の本質に迫る連載企画。シューズ史の1ページを担ってきた数々の名プロダクトを振り返りながら、シューズの大辞典「アイコニックアイテム」を構築していこう。1994年発売のNew Balance「M1600」も、90年代のスニーカーブーム時からファンに愛されているモデルのひとつ。New Balanceが誇るオンロードランニングシューズのハイエンドラインである1000番台として初のABZORB(アブゾーブ)を搭載したスニーカーであり、その特別な履き心地は時代を超えてファンを満足させ続けている。そしてオリジナルの発売から28年を経たいま、M1600で実現したスペックを受け継ぎアジア生産でコストを抑えた「CM1600」が1994年当時を知るファンだけでなく、オリジナルを知らない若い世代からも注目を集めている。
オリジナルが1994年に登場した「1600」は、「1300」「1500」「1400」に続く(1400より1500が先に発売)4代目の1000番台モデル。New Balanceが独自に開発した衝撃吸収と反発弾性を兼ねそなえるクッショニングテクノロジー、ABZORB(アブゾーブ)を1993年発売の「M998」と同様に搭載している。アッパーには1500から受け継ぐ小ぶりのNロゴを配し、複雑な形状にカットされたシンセティックレザーとざっくりとしたメッシュ素材を採用。90年代デザインらしいハイテク感を醸し出している。

衝撃吸収と反発弾性を備えたクッショニング素材ABZORBをミッドソールに搭載。足にかかる衝撃を吸収してくれる
M1600が発売された1994年当時は、社会現象とまで評されたハイテクスニーカーブームの直前にあたり、当時のストリート誌にもNew Balanceの最新ハイテクスニーカーという位置付けで度々M1600が取り上げられていた。とくに北米のスポーツショップJUST FOR FEET(現在は撤退)が別注したM1600はトゥボックスのサイドにゴールドで「LIMITED EDITION」のロゴが刺しゅうされたラグジュアリーなバリエーションで、海外限定モデルという付加価値も手伝ってコアなファンから熱狂的な支持を集めていた。その機能美あふれるデザインと他に比べられない履き心地の良さには多くのスニーカーファンが憧れつつも、New Balanceブランドのハイエンドモデルに相応しいプライスが設定されていたため、実際に手に入れるためには相応の覚悟を必要とする特別な一足だったのも事実である。

その後1600は生産拠点をアジアに移し「CM1600」のプロダクトネームを冠して復刻を果たした。他の1000番台には知名度の高いモデルが多い一方、初期のCM1600に対しては「知る人ぞ知る名作」として評価が高かった。国内外の人気ブランドが提案するコラボモデルのベースにもセレクトされていた。
そんなCM1600に再びスポットライトが当たったのが2021年7月のこと。前述したJUST FOR FEET別注のLIMITED EDITIONをサンプリングした日本限定モデルを、多くのメディアが取り上げたのも記憶に新しい。「CM1600 LE」と名付けられたバリエーションはグレーとネイビーに染めたシンセティックレザーに、ざっくりとした質感のメッシュ素材をインプット。トゥボックスサイドの「LIMITED EDITION」ロゴをゴールドカラーで刺しゅうするとともに、シュータンには「JAPAN EXCLUSIVE」のテキストをインプット。ヒールサイドのABZORBの文字もオリジナルに準じたディテールであり、ヒールのバック部には、「JUST FOR THE FIT」の刺しゅうでブラッシュアップ。何より税込で1万9800円に抑えられた価格設定は、「New BalanceはUSAかUK製に限る! 」と一家言あるコアなファンをも振り向かせたのだ。

発売から約27年を経て1600のデザインが再び注目された背景には、コアなファン層がアジアで生産されるNew Balanceを抵抗なく手に取るようになりSNSで情報がシェアされるようになったことも影響しているだろう。もちろん「990」や「991」に代表されるMade in USA/UKコレクションの人気も高いものの、生産国“だけ”にこだわるのはもったいないという考え方がNew Balanceファンの主流になりつつある。2022年6月にラインナップした2色のCM1600も、そうした令和時代のNew Balanceを象徴するプロダクトといえそうだ。

カラーはオリジナルのM1600をサンプリングしたグレーとネイビーの2色
アッパーのシンセティックレザーを落ち着いたグレーに染め「CM1600LG」と、深いネイビーが全体にシャープな印象を醸し出す「CM1600LV」は、New Balanceらしさと言い換えても違和感がないヘリテージ性を前面に押し出したカラーウェイだ。それもそのはず、この2色はオリジナルのM1600をサンプリングしたカラーブロックであり、王道のバリエーションである。

オリジナルを継承したロゴやディテールは、若者だけではなくオールドファンも魅了する
アッパーのサイドパネルで目を惹きつける小ぶりのNマークや90年代のスニーカーらしいチャンキーなソールは、オリジナルのディテールを再現しながら現代のトレンドにも沿った仕上がりだ。オリジナルを知る世代にとっては懐かしく、若い世代には新鮮なニュープロダクトと受け取られるに違いない。何よりNew Balanceが誇るハイテクデザインを、税込1万6500円で楽しめるのは魅力的。スニーカーファンが共有する人気ディテールを押さえつつ、他とは違う足元を演出したいファッショニスタにとっては魅力的な選択肢だ。